2011年4月18日月曜日

予想脳



「社会」「ネットワーク」「予想」、いわゆる「集団知」「集合知」といったものを物理として研究するためのネタがないかと探していたときに「つながる脳」という本にぶつかり、その流れで見つけた本です。

著者の主張は、脳の本質的な機能は、絶えず流入する情報をもとに、未来予想すること。現実の世界を抽象化した「テンプレート」という主観的な空間の中に、どのような変化をどのぐらいの確率で行うのかといった情報のついた「オブジェクト」を配置して未来を予想する。テンプレートの中のオブジェクトの数は少ないので、人工知能で問題だったフレーム問題、複雑な環境下であやゆる可能性を絶えず検索してベストな方法を計算することは計算量が爆発して不可能、を回避出来る。また、脳は予想と現実の誤差を自動で計算し、それを「フレーム」という視点で認識してオブジェクトに関する学習を行い、予想精度を高める。

脳を理解するには、社会が多数の脳が結合したネットワークであり、脳は社会での予測を行うよう進化してきた、という視点が重要である。脳単体での研究には限界がる。

また、表紙には甘利先生の「脳は情報を予測する装置として発展した。こう見ることで脳の秘密が解き明かされていく」。

脳を理解するには、神経細胞のつながりや時間変化を丹念におうだけでは限界がある。丁度、鳥の羽と同じように。その意味で、書いていることは納得できるのですが、イマイチ消化不良。「つながる脳」と「ソーシャルブレインズ入門」を読んでみようと思います。

2011年4月11日月曜日

群れろ!



人の集団知、集合知や情報カスケードといったハーディング(群れ化)の研究のヒントになるかと思い、読んでみました。カメムシがなぜ群れるのか、蝶ならどうか、蛍はどうか、アリはどうなのか、といった感じで、さまざまな昆虫が群れる理由が丁寧に解説されています。最後のセクション「つながる群れ」では、アリがフェロモンをうまく使って「ボトムアップ」で自己組織化された協調行動をとる群知能のこともすこし出てくるのですが、私的にはここらあたりをもっといつこんだ解説を読みたかったです。もっとも、それは情報工学の問題であって、分野が違うもかもしれませんが。

宮古島や奄美大島では、シロオビアゲハがベイツ型擬態という、毒をもったベニモンアゲハと同じ模様を持つのに数年しかかからなかった(ただし、模様だけで自分は毒をもたない)とか、タガメはオスが子守をするけれど、別のメスは、そのオスを自分のものにするためそのオスの子供を殺す「子殺し」を行うとか、雑学的には面白い本なので、昆虫が群れる理由を知るにはいいと思います。