2012年11月16日金曜日

ヒトはオッズにどう反応するか?

実験論文IIが完成し、昨日からオンラインで読めるようになりました。

タイトルは、 

Collective Adoption of Max-Min Strategy in an Information Cascade Voting Experiment 

ヒトが他人の回答をカンニングしながら2択のクイズに答える実験です。実験論文Iでは、この系で相転移が起こることを示しました。クイズの正解を知らないヒト(多数派に群れるヒトという意味でハーダーと呼んでいます)の比率が90%以下なら、十分多くのヒトが回答すれば多数派が正解になる。けれど、ハーダーの比率が90%を越えると、十分多くのヒトが回答しても必ずしも正解にならない。多数派が間違える確率は40%になり、ランダムに回答するのと大差ないことになる。こうした相転移が存在することを実験データと理論モデルで示し、情報カスケード相転移と名付けたものでした。

つまり、2択のクイズを十分多数の集団にカンニングさせながら回答させると、そのクイズが10人に1人以下しか正解を知らない問題であるなら、100回に40回は多数派の選択は間違っているけれど、10人中2人以上が正解を知っているなら、多数派の選択は正しい。そして、こうした水が氷になるような質的な変化は、十分多数のヒトの極限(専門用語では熱力学極限)で相転移となり、水が氷になる変化と同列に語ることができる。

この「カンニング」で被験者に与えた情報は、2択の各選択肢を選択したヒトの数。相転移が起こる理由は、その数に対するハーダーの反応が鋭いから。左図はその実験データを示したものです。横軸が選択肢Aを選んだヒトの比率、縦軸にはその情報をカンニングしてハーダーがAを選ぶ確率を描いたものです。図はAを選んだヒトの比率50%を原点とした原点対称になるので、50%以上をプロットしています。

10人中5人がAを選んだ場合(n1/t=0.5)、ハーダーが選ぶ確率はA、B共に同じで50%。しかし、10人中6人がAを選ぶと、Aを選ぶ確率は70%まで上がる。さらにAを選ぶヒトの数が増えるとAを選ぶ確率は上昇するのですが、重要なのは10人中5人から10人中6人での選択の確率の変化。この変化が鋭く、青の点線で示した対角線よりも上にある時、系は相転移を起こします。この変化が鈍く、ニュートラルの50%から10人中6人で60%以下にしかならず、対角線よりも下にくると相転移は起きません。 このような確率の急激な増加は動物界でもよく見られ、Quorum 反応と呼ばれたりするそうです。ヒトの場合、絶対数に対する反応ではなく、あくまで率に対する反応なので、その点がQuorum反応とは異なりますが、起きる現象は非常に似ています。

では、「カンニング」で与える情報を各選択肢を選んだヒトの数ではなく、オッズにするとどうなるでしょう。ここでオッズは各選択肢を選んだヒトの数の逆数に比例し、競馬のオッズと同じく、正解を選んだことに対するリターンはオッズに比例するとします。例えば、10人のうち、Aを9人、Bを1人選んだ状況では、Aのオッズは自分の選択を含めた11をAを選んだ9人+自分1人の10人で割って1.1倍。Bのオッズは11をBを選んだ1人+自分の2人で割って5.5とします。このとき、ヒトはどのように選択し、その結果、十分多数のヒトが回答すると何が起きるのか?それが今回の論文で扱った問題です。

正解を選んだことに対するリターンがオッズに無関係の場合、選択者数を与えた場合と同じことになります。オッズが小さい=選択者数が多い、オッズが大きい=選択者数が少ない、なので、オッズの小さな選択肢にハーダー(正解を知らないヒト)の選択が集中するでしょう。しかし、今回の実験ではオッズが小さい選択肢はそれを選んで正解してもリターンが小さく魅力にかけます。一方、オッズが大きな選択肢は、人気のない選択肢なので間違っている確率が高いでしょうが、それを選んで正解すればリターンは大きく魅力的です。もちろん、正解を知っているヒトには選択の余地はありません。オッズが小さくリターンが小さくても、それを選ぶしかない。では、ハーダーはどうするのか?どうするのが正しいのか?

ゲーム論的には、この状況はゼロサムゲームになり、Max-Min戦略をとるのが最適であることが知られています。そのMax-Min戦略とは、共同研究者の久門さんによると「選択肢を選ぶ比率をオッズに逆比例させ、比率×オッズが選択肢A、Bで同じになるようにしなさい」というものです。そうすれば、A、Bが正しい確率がどうであっても、その不確定性を消すことが可能である。このように、オッズに逆比例する比率は、オッズが選択者数に逆比例したので、選択者数に比例する比率と同じことが分かります。つまり、10人中6人がA、4人がBを選んでいる場合、60%の比率でA、40%の比率でBを選ぶのがゲーム論的に正しいということです。もし、ハーダーがこのように選択をするなら、上記の相転移は起こらず、どんなに難しい問題であっても、十分多数のヒトが回答すれば、多数派の選択肢が正しいことが分かります。


では、実際にはどうなのでしょう。左図が実験結果です。選択者数を与えたときの上図の振る舞いとは異なり、ほぼ対角線に乗っていることが分かります。これはゲーム論での最適戦略を被験者集団が採用していることを意味します。ただし、Aを選ぶヒトの比率が3/4を越えると、Aを選ぶ確率は3/4のままで増加しません。これは、オッズが小さくなりすぎ、Aの魅力が低下したため、オッズの大きなBを選択する傾向が増したためと考えられます。もちろん、この傾向は最適な振る舞いではないのですが、競馬でも万馬券狙いのバイアス(Favorite-logshot bias)があることが知られていて、それと同じことが起きているのでしょう。もっとも、クイズの場合、万馬券(倍率100倍)とは程遠く、たかだか4倍程度の倍率のオッズでヒトが欲に目が眩んでいるのですが。

 また、10人中7人程度のところで、対角線を微妙に越えていることも分かります。この結果は、オッズを与えた場合でも相転移することを意味します。ただし、相転移が起こるハーダーの比率は非常に高く、シミュレーションでは99%。この結果は、100人中1人しか正解を知らない問題なら、相転移し、多数派が間違うこともあるけれど、10人中1人の状況なら、そうした事は起きないことを意味します。

以上が論文内容。2010年の夏からこうした実験を始め、まるまる2年かけたものです。こうした内容を微妙ととるか、面白いととるかは、ヒトそれぞれ。私自身は十分楽しい(苦しい!)ものでした。

共同研究者の久門さん、高橋先生、および実験を手伝ってくれた北大のニコルさん、中村さん、北里大の入江君と2010年の卒研生のメンバーの神田朋彦ヘンリー君、石澤遼君、熊谷直紀君、辻崇史君(元気にしてますか?)、また実験に参加してくれた北大および北里大のみなさん、ありがとうございました。

追記:11月15日にPhyscal Review Eに投稿したら速攻で雑誌が違うからという理由でリジェクト。前途多難な予感がします。

2012年11月7日水曜日

量子論の基礎

「量子力学を学ぶのにいいテキストは?」ときかれて、私が推薦するのがJ.J.SakuraiのModern Quantum Mechanics。自分が学生のときに最初に読んだ量子力学のテキストであり、その構成に感動したからというのが理由。なぜ、Sakuraiだったのかというと、当時入っていた東大駒場のサークル「自然科学研究会」の先輩が「いい本」だと輪講していて、それに影響されての選択でした。

Sakuraiのすばらしいところは、量子論の「状態」「観測」をまず1個のスピンというもっとも単純な系で展開すること。それによって、ブラ・ケット、内積、エルミート演算子、固有ケット、展開係数、確率を導入し、古典論との違いを際立たせる構成をとっていました。

一方、その他の名著とされるシッフやメシアはシュレーディンガー方程式を解くことに力点をおいていて、はっきり言っておもしろくなかった。

こうした経験からSakuraiの本を推薦してきたのですが、明日の11月8日、9日に東大の清水明先生が「ベルの不等式」に関して講義されるとのことだったので、評判のよい「量子論の基礎」を読んでみました。

結論から言えば、おもしろい本です。Sakuraiのテキストを彷彿とさせる簡潔・明晰なテキストで、量子論での状態、観測量、確率解釈、時間発展、理想測定の5つの要請をもとに展開します。特におもしろかったのが理想測定というもので、Sakuraiでは登場しなかった概念。また、不確定性原理に関しても、ハイゼンベルグのもの(測定誤差と測定による撹乱による誤差)、非可換な演算子の別個の観測によるもの、同時の観測によるもの、を分けて(結果だけですが)解説している点もすばらしい点です。

また、異なる場所での観測の間の相関に関する 不等式(ベルの不等式)は、局所実在論の系では必ず成立するが、量子論ではそれが破れることを予言し、実験でも検証されているので、量子論は局所実在論を越えた理論である点がその本質なのだとあります。

という感じで、すばらしい本なのですが、不満点をいくつか。まず、理想測定をどう実現するのかが分からないので、要請5を置く意味がよく分からない。量子力学を勉強していて一番難解なのが「観測とは何か?」であり、特に「いつ観測されたと考えるのか」がいまだに私には分かりません。例えば、スピンの観測では非一様磁場によるシュテルン・ゲルラッハのが有名ですが、磁場が弱い場合、磁場の素のフォトンとスピンが相互作用せず、観測されたことにはならないはず。では、どこから「観測は始まるのか?」とか。こういうのは、私の量子光学やレーザー物理に対する理解不足からくるものではあるのですが、そうした点を含め「量子測定理論」のエッセンスが欲しかった。

 また、これはテキストに対する不満ではないのですが、ベルの不等式は確かに局所実在論を明晰に否定したことは事実ですが、内容は干渉効果なので、ダブルスリットによる電子の干渉と内容的にはパラレル。二つのスリットのどちらかを通るという局所実在論を干渉縞が否定するのと物理的には同じなのでは、と。もちろん、ダブルスリットだけなら、局所実在論を保ちながら干渉縞を説明する理論はできる?ので、そうした曖昧さを完璧に排除する点で「ベルの不等式の破れ」はすごいことは理解できるのですが。

とにかく明日、明後日の講義が楽しみです。

追記:高校から大学に入ったころは、Sakuraiやフランコ・セレリの「量子力学論争」などを読んで、量子力学を究めるつもりだったのが、いまではヒトを使った集団社会実験とそのモデル化や競馬の研究をやっている。いったいどこで間違ったのか、と考えていくと、素粒子論の勉強で数学にハマったのが元凶。もういちど量子をやるか、それともヒトの意思決定の闇に切り込むか、迷うところです。ヒトの意思決定にも量子論が使われていて、眉つばだとは思うのですが、観測に対する撹乱などを考えていくと、量子論の枠組みは有効なのかもしれません。ヒトの意思決定は局所実在論ではとらえきれるとは思えないし。そこを明晰にえぐり出す「ヒトのベルの不等式」を定式化して実験で示せればいいのでしょうが(もっとも、ヒトの考えることは同じなので、やろうとしているヒトはいるはず。要はアイデアと実験をやりきる力)。

追記2:特別講義は非常に面白いものでした。ただ、「実在性」といわれてピンとくる学生さんでないと、なかなか難しい面もありました。話はEPR(Einstein-Podorsky-Rosen)の論文から始まるのですが、そこで定義される「実在性」の定義がツッコミどころ満載のもの。ただ、学生むけなので、私があまり質問するのも気がひけるので極力スルー。そして、古典的な素朴実在論は否定され、量子論という局所(=因果律)理論で現象が記述出来ることをベルの不等式が破れることで一網打尽に示し、残りは最近の研究の紹介。数式もほとんどなく(北里では量子も統計力学も選択科目という事情に配慮されてのものでしょうが、最後に「線形代数はやってますか?」という質問が出たことにショックを受けている学生さんも)、わかりやすく話していただきました。ただ、古典的な素朴な実在論は否定されても、「状態、物理量は、それを準備・観測する実験装置まで含めれば実在だ」と答えていただいた(私の誤解でなければ)ので、実在性を否定したわけではない。

理想測定について講義後に質問させていただいたのですが、シュテルン・ゲルラッハの実験のような磁場が非常に強く、観測誤差が小さい実験のことであると教えていただきました。詳しくはPhysics Report(2005)にFAQがあるとのことなので、時間が出来たら勉強してみたいと思います。

2012年11月6日火曜日

ライアーゲーム@北里祭

平成24年11月3,4日の北里祭で実施した「シミュレーション ライアーゲーム」が無事に終了しました。

3日の土曜日は6ゲーム、4日の日曜日は10ゲームで100名弱の一般の方の参加がありました。土曜日はなかなかお客さんが集まらず心配したのですが、日曜日は朝11時前から午後4時までフル稼働でゲームを実施できたようでなによりです。私の娘も2回参戦し、1回勝てたのがうれしかったようです。私も一度参戦しましたが、これは難しい。必勝法もなく単にランダムに選択し、負けたという感じでした。


一方、社会物理実験として行った二択のクイズのほうは、システムの不備などがあり、十数名しか参加できなかったのが残念です。

ゲームを盛り上げてくれたPHYSICS部のみなさん、また司会で活躍してくれた石田君、長洲君、ありがとうございました。入江君も初めてデータがとれたのはなによりです。 近いうちに「夢庵」で打ち上げをしましょう。11月26日(月)午後7時あたりでしょうでしょうか?(もっと近い日程てもいいですが。)

来年の学祭もPHYSICS部とコラボできるならぜひお願いします新たなゲームを考えて、今年以上の人を集められるようにしたいと思います。また、社会物理実験も心理学的な面を加味して、パワーアップをはかりたいと思います。

ゲームで得たデータから何か面白いことが分かるかどうかは分かりませんが、このゲームで得たデータは世界にここしかない貴重なものなので、それが得られたことはうれしいです。もし興味があれば、石田君の卒論発表を楽しみにしてください。もちろん、個人的にききに来てくれてもいいです。

ありがとうございました。

2012年10月23日火曜日

シミュレーション・ライアーゲームのルール

学祭で実施予定の「シミュレーション・ライアーゲーム 君はフクナガに勝てるか?」のルールについて。

10回の少数決ゲームで、少数派に入るごとに1ポイント、最終回は3ポイント。
10回のゲームでの総ポイントが高いヒトが勝者で、景品は額面300円のQUOカード。

参加費と景品の関係をどうするのか?また、フクナガをどうゲームに絡ませるか?
でいろいろ考えています。問題は知り合いがグループで来た場合、誰がフクナガが
すぐに分かってしまいゲームとして面白くない。その場合、フクナガに必ず勝てるので、
そもそもゲームにはならない。

そこで、以下の案を考えています。

参加費を100円とし、7名のゲームの場合上位3名に、9名のゲームの場合上位4名に景品としてQUOカード。7名または9名のうち3名はフクナガのグループというのは変わりません。QUOカードは70枚用意し、20ゲーム実施する。

ランダムに選ぶと、勝率は3/7または4/9となり、リターンの期待値は130円前後。でも、フクナガのグループが暗躍するので勝率はもっと落ちるかもしれない。では、フクナガのグループは何をやってくるのか?それに対抗し、QUOカードをGETするのはどうすればいいのか?

業務連絡:ゲーム事務局のPHYSICS部のみなさんへ

このゲームの収支は、フクナガグループは参加費を払わないので、平均5名として
500円。それを20ゲームで1万円となります。 フクナガグループをやってくれる学生さん(ただし10ゲーム以上)で、希望者には後日学食!(または夢庵)にご招待します。もちろんゲームでGETしたQUOカードはGETしたヒトのものです。

ゲームのルールに関しては、まだ最終決定したわけではないので、いいアイデアがあればぜひ教えてください。

2012年10月13日土曜日

シミュレーション・ライアーゲーム

11月3日、4日の土日に行われる北里大学の学園祭の展示で「シミュレーション・ライアーゲーム 君はフクナガに勝てるか?」というのをやります。内容は、「ライアーゲーム」の2ndステージで行われた少数決ゲーム。2択の選択で、少数派の選択を選んだら勝ちというものでした。ドラマでは22人でスタートし勝ち抜き戦を行います。問題はこうした少数決ゲームに必勝法があるのかどうかということ。参加者間での交渉が一切許されていない場合、必勝法はありません。

一方、ドラマでは、参加者間で交渉が可能で、ここでフクナガがはある必勝法を考えました。それは、22名のメンバーの自分以外の21名を3つの7人のチームに分け、自分が各チームに8人目として入る。そして、各チームを4人の2グループに分け、自分が属さない4人のグループに自分と異なる選択肢を選ばせる。すると、自分の属さないグループは1回めで消え(4+4+4>3+3+3+1(=自分))る。残りの各チームの4人を2人のグループに分けて同じことを繰り返す。すると、次も(2+2+2>1+1+1+1(=自分))でフクナガは残る。最後も同じことを繰り返し、(1+1+1>(1=自分))でフクナガの勝利。

もちろん、各チームのメンバーはフクナガの指示に従う代わりに、勝ったときの報酬は山分けという約束をする。8人のチームなので毎回二つの選択肢に半分の人数を割り振れば4、2、1と3回目までは必ずチームのメンバーは残る。全体では22人でゲームを始めるので、最初に11人以下、2回めで5人以下、3回目に2人以下となり、2人となった時点でゲームは終了するので、賞金をチームの8名で分ければいい。

学祭ではこのフクナガの戦略をモデルにゲームを実施しようと考えています。基本は7名の少数決ゲーム。全部で11回少数決を行います。毎回参加者の誰かに2択を考えてもらい、それを7名全員で選ぶ。そして、少数派を選べば1ポイントとし、全11回での総ポイントが多いヒトが勝ち。ただし、最終回はゲーム性をますために3ポイント程度のボーナスポイントとしようかと考えています。最初は、このプレーンな少数決ゲームをやろうと思っていたのですが、いまいち面白みに欠ける。経済物理学では、過去の少数派の選択肢の時系列から未来の少数派を予測し、過去のパターンに従う群集派と過去のパターンの逆にかける反群集派に相分離する相転移が起きるといわれている(誰も検証していませんが)のですが、それは多人数での話。今回のような少人数かつ試行回数が少ない場合、そうはならないはず。なので、物理の研究としてもイマイチ。

そこで、プレーンの少数決ゲームにフクナガをいれてみることを考えて、サブタイトルに「フクナガ」といれたのです。フクナガがどういった戦略で勝ちにくるか。それにどう対抗するか。そこを楽しんでいただけたらと思います。

ゲームの参加費は100円、フクナガに勝ったときの景品は額面300円のQUOカードを1人1枚。1ゲームに20分近くかかると思われるので、1時間に2ゲームとして朝10時から夕方4時までで12ゲーム。二日で24ゲームしかできそうにありません(ただし、フクナガが負けつづけてQUOカードがなくなった時点でゲームは終了。QUOカードは52枚用意します。)が、楽しんでいただけたらうれしいです。

このライアーゲームと平行して、2択のクイズのゲームを行います。2択のクイズ60問に答えていただき、総ポイントを競うゲームです。ゲームを行うマシンを2台用意しています。マシンAは過去の回答者の回答をカンニングできるマシン。マシンBは、過去の回答者の回答をもとに、得られるポイントに倍率をつけるものです。人気のない選択肢の倍率は大きくなっているので、バクチ的ではあるけれど、ポイントを稼げるチャンスでもあります。マシンA、Bのどちらでも、過去5番以内の成績を出せれば景品としてQUOカードを差し上げます(ここは当日変更するかもしれません。あまりに難しい場合は申し訳ないので)。こちらは参加費はありません。

注意:ゲームのルールはこれからシステムの作成と平行して変更するかもしれません。また、7名のうち誰がフクナガなのかは発表しません。

追記:11月3日(土)の中夜祭にはサンドウィッチマンがくるのですね。お化け屋敷もあるらしいので、楽しいかもしれません。

修正:上記文章を一部削除しました。ゲームのルールはたぶんこのままです。

2012年3月11日日曜日

統計学を拓いた異才たち

統計学の歴史に関する本。カール・ピアソンによる一般の確率分布の4つの母数(平均、分散、歪度、尖度)をデータから推定するのが、科学の仕事である、という1890年代の統計革命の開始から、現在のカーネマン・トヴァスキーの個人確率までの100年余り統計学や確率論の話題を、数式を用いず、いろいろな逸話を交えて説明した本です。数式を用いない以上、どうしても分かった気にならない部分もありますが、この本はいい本です。面白い。

特に興味深かったのは、フィッシャーが喫煙は肺癌の原因だと認めることはできないと、最後まで主張した点。彼の主張は、癌にかかったヒトを後から調べて煙草をすっていたからといって、肺がんの原因が癌とは言えない、というもの。もしかしたら、癌になる遺伝子があり、その遺伝子を持った人が煙草を好む傾向にあるのかも知れない。煙草が癌の原因であると主張したいなら、彼の開発した実験計画法を使わないとダメ。つまり、ヒトを多数集め、そのうちランダムに選んだヒトに煙草をすわせ、残りの人に吸わせずにいて、この二つの集団で癌になる比率に「有意」な差があるなら、煙草が癌の原因(のひとつ)であると科学的に主張できる。もちろん、こういう実験はなかなか難しい。実際の研究は、癌にかかったヒトとかかっていないヒトのデータを集めてきて、後付けの知恵で解析するもの。彼の主張は正しいです。後付けの知恵でいいなら、いくらでも自説に有利に証拠固めが可能なので。その点、アメリカでは「差別訴訟」で、統計学の結果を証拠採用するかどうかでもめているそうで、統計学者はフィッシャーの論理で反対しているとも。

あと、個人確率で関してカーネマン・トヴァスキーの研究をコルモゴロフ流の確率論で扱うなら、ヒトのもつ「確率」は5つの値しかもたない、というスペッスの理論も興味深いです。

1:きっと正しい
2:どちらかといえば正しい
3:正しいか間違っているか同等
4:どちらかといえば間違っている
5:きっと間違っている

の5段階でヒトは確率を把握する、という理論。たしかに、ヒトは降水確率60%と70%の差を認識しているとは考え難い。けれど、競馬のオッズの精度は1%。得票率x%の馬の勝率はx%という法則が得票率1%から60%のほぼ全域で成立する。ヒト一人ひとりではあやふやでも、情報にコストがかかり、かつ多数が参加すれば集団での確率の認識力は高くなるのでしょう。

最後の競馬の話は蛇足ですが、この本に書いていることを数式を交え、逸話や概念の丁寧な説明もある確率・統計の本を読みたいものです。



2012年3月8日木曜日

告知:オープンレクチャー「情報カスケードの物理」

今週末の土曜日(2012年3月10日)、オープンレクチャーを行います。タイトルは、「情報カスケードの物理~人が群れるメカニズム」で、午後2時から1時間半、北里大学理学部S号館の3階セミナー室で行います。対象は、高校生ですが、中学生でも社会人でもOKです。

レクチャーは、30分程度の実験と1時間の講義で構成し、次のように進めます。

14時から14時10分       :情報カスケードとは
14時10分から14時50分 :二択のクイズによる情報カスケード実験とその解析
14時50分から15時10分 :休憩
15時10分から15時40分 :情報カスケードと相転移

最初の10分は、情報カスケードについて、知られていることなどをざっと概観します。その後、実験を実施し、その実験結果を眺めた後、情報カスケードの物理について講義をします。

実施する実験は、昨年(2011年)の6月から7月に北大で行った実験とほぼ同じものです。二択のクイズを120問出題し、まずは自分の知識だけで回答し、次に約50名の回答者の回答(二択の選択肢Aが何人、選択肢Bは何人という情報)を参考にして回答していただきます。各問2回の計240回の回答となります。そして採点し、他人の回答を参考にすることで、どのような変化が現れるのかを確認します。

成績の比較だけだと、イマイチやる気にならないかもしれないので、なんらかの景品を準備しようかと考えています。

ちなみに、現時点(3月8日午後1時)での参加希望者は1名だけ。「情報カスケード」という言葉にあまりなじみはないかも知れませんが、人がどのように群れ、そして間違うのかを物理や相転移というキーワードで語られたことはないはずです。ご興味ある方は、ぜひご参加ください。

ちなみに、写真は北大を訪れたときに携帯で撮影した「クラーク博士像」。


追記:理学部WEBページでは90分の講義となっているので、後半の講義の時間を短くし、また、実験の終了時間は人によりマチマチなので、実験後の休憩時間を20分と長めにしました。

追記2:前日午後5時半の時点で、参加希望者が2名追加。計3名だそうです。当日どの程度増えるのか分かりませんが、楽しめるものにしたい。

追記3:参加者は5名でした(それに十河先生、小寺先生)。参加者から「120問のクイズの回答が、他人の回答のカンニングによってどう変化するのか、だけでなく、講義で扱った「他人の情報をコピーする確率」の式を使って、解析できないか」、といご指摘をいただきました。確かにその通りで、せっかく120問回答したのだから、もっとそれを活用する方法を考えたいと思います。当初は、自分が他人の情報をコピーする確率の式を推定し、どの程度「素直」なのか「天の邪鬼」なのかを計測することも考えたのですが、開発時間がなくて断念・それは次の機会があればということにします。

最後に、参加者のみなさま、ありがとうございました。