2009年12月25日金曜日

Montana Terraces "T" Pinot Noir 2007



ニュージーランドのピノノアールのワインには興味があったのですが、プレゼントしてもらったので、開けてみました。このワインは、ニュージーランドでも最大のワイナリー Montanaトップブランドらしく、日本にはほとんど入ってきていないもののようです。値段は、40ドル程度なので、ブルゴーニュワインでいえば、ブルゴーニュルージュと村名ワインの中間ぐらい。高くもなく、安くもないというレベルです。

で、最初に驚いたのが、開けようとキャプシールを剥がそうと思ったら、コルクではなくスクリューキャップだったこと。スクリューキャップは、テーブルワインなどでコスト削減のためにコルクの代用に使うもので、この値段では普通ありません。でも、「神の雫」でスクリューキャップのリシュプールと呼ばれるワインがあることを知っていたので、ニュージーランドでは普通なのかも知れません。

ワインの感想ですが、香りはピノらしい華やかなもので、ビンテージが若いので当たり前ですが果実味も豊かでほどよい酸味の飲みやすいおいしいワインでした。値段分の価値はあるかなと。

2009年12月21日月曜日

進化しすぎた脳



2003年にニューヨークの慶応義塾の高校生に対して行われた4回の講義+研究室の院生に対する雑談風の講義の5回分の講義の記録だそうです。結論は、とにかく面白い。脳というのは宇宙とともに、面白いことは間違いないテーマではあるのですが、池谷氏の語り口はわかりやすく、また扱っているトピックの選択も非常にうまい。


印象に残ったのは、
(1)左右のヒゲと報酬系を刺激する脳の部位に電極を刺して実現したリモコンのネズミ
(2)ジェームズ・ランゲの「悲しいから涙が出るんじゃない。涙が出るから悲しいんだ」
(3)NMDA受容体が、脳内のランダムにみえるシグナルからルール(それも時間の順序という因果律的なもの)を抽出することを発見し、ヘブ則を証明したという筆者たちの発見。

とにかく分かりやすいのがいいです。

2009年12月16日水曜日

サバイバル時代の海外旅行術



エリカ様のダンナ様、高城氏による旅行術に関する本。最終的な目標は「海外へ出て、自分の目で世界を見る」こと。個人が自力で生き残る術をみつけなければならない現代は、いわば「サバイバル時代」である。個人のレベルでグローバルな視点を持つために、海外に出る必要があるのだ、と。

日本にはいいガイドブックがないから、自分で作る必要がある。手順は、
(1)Booking.COMでホテルを探し、
(2)skyscannerで、エアを探し、
(3)CIAの 「The World Factbook」で正確な情報をインテリジェンスし、
(4)WikiTravel も情報を得るのに有益で、あとガイドブックでは
(5)ロンリープラネットのポケット版がおススメ。

そのほか、「地図はもらえ、もうらうより作れ」、「日没時間をチェックせよ」、「やりたいことを10決めよ」、「海外では携帯を買え。SIMなしiPhoneをスカイプ電話に」、「デュべティカのダウンはパッキングで小さくなる」、「NASAの防寒ブランケットはコンパクトで暖かい」、「日本の電子辞書は最高」、「高級紙袋だと機内持ち込みの手荷物の数にカウントされない」、「ソーラーパネル充電器を」などなど。

果たして、こういう知識が役に立つのかどうか謎ですが、今度旅行するときはCIAのサイトで調べ、ロンリープラネットのポケット版でも買ってみます。その意味では有用な情報を得たといえます。

あと、面白かったのは、「分子料理」に関する記述で、「あらゆる料理は物理化学の‘式’で表せるという科学的視点に基づく調理法。すべての食材を数式化し、料理を徹底的に分析したうえ調理を始める。」・・・「ファットダックでは海の幸を食べるときに、iPodを聴きながら食べることを推奨しています。僕が実際に食べながら聴いたのは、波の音でした。そうすることで、脳は通常よりも塩分が30%も増加したものとして認識するらしく、それを前提に調理の塩加減を調節しているとのことです。」これって本当なのでしょうか?

2009年12月12日土曜日

線種とgnuplot


論文を書いたり直したりするたびに、図で用いる線種のgnuplotでの設定やその英語で混乱するので、以下備忘録。


実線:solid line (continous line):連続した線
set style line 1 lt 1 lw 3

破線:dashed line (broken line):一定の間隔で短い線要素が規則的に繰り返す線
set style line 2 lt 2 lw 3

点線: dotted line:一定の間隔で「ごく」短い線要素がわずかな間隔で並んだ線
set style line 3 lt 3 lw 3

一点破線: chain line (dot-dash line):点と短い線分の繰り返し
set style line 4 lt 6 lw 3

VGN-T30/BをSSD換装の顛末2

すこし古いノートパソコンのハードディクスをSSDに交換する話の続き。

VGN-T30Bのほうは、前回も書きましたが、快適。いままでの「のろま」な感じは払拭され、CPUがCeleron900MHzとは思えないぐらい快調です。もっとも、前回は、すこし仕事をした(パワポを作ったぐらいですが)りすると、いきなり起動しなくなったので、どこまで信用していいのか不安です。SSD交換をやって頂いた業者(PC-Expert)さんからは、「SSDの初期不良」という回答があったのですが、いきなり起動しなくなることがまた起きないとも限りません。6万円の投資は、バカな決断ですが、WEBブラウザやポータブルDVDプレイヤー、学内でのプレゼン用にあと2年くらいは使いたいですね。
(ちなみに、換装したSSDはG-Monster50CF SSD64GBとある。)

一方、もう一方のVGN-G1KAPのほうは、結果はイマイチ。もともと激遅なマシンではなかったこともありますが、まず、業者さんから、キャッシュつきのSSDとの相性がよくないので、キャッシュのないSSDで対応します、というメール連絡。この時点で嫌な予感(つまり「プチフリ」)はしたのですが、メールには、プチフリに対応するソフトFlashFireをインストールしてプチフリに対処しますとのこと。そこで、キャッシュのないSSD(納品書にはPHOTOFAST 18ZIFV264G-SSDとあります)での対応をお願いしました。値段的には、10%割り引きもあり、5万円ほどですみました。が、なんとなく動作がギコチナイというか。アプリの起動は速いときはたしかに速い。でも、ときどき引っかかる。待てばちゃんと動くので、フリーズしたわけではない。「プチフリーズ」とはうまいこと言ったものです。

こちらのマシンはLinuxをインストールするので、パーティション分割後Windows XPの再インストールを行ったのですが、その際 Flashfireのインストール前後での様子を見ると、たしかに効いている。「ギコチナサ」がすくなくなって、ソフトの起動も体感的に早く感じるレベルに。一方、なぜか分かりませんが、Linuxのほうではあまりプチフリの影響というかギコチナサが少ない気がします。

しかし、結論としては「キャッシュがないSSDには換装の価値はあまりない」ですね。「全体としてのっそり」なのと、「大体高速だけれど、ときどき止まる」のでは、前者のほうが予想がつくぶん対処しやすい。来年ノートパソコンを買うときは、最新のSSD搭載のものを選びたいと思いました。

追記:G1-KAPでYoutubeを見ていると、しばしば数秒止まる。これも「プチフリ」の影響なのかはわかりませんが、SSD換装前はこのような現象はおきませんでした。

2009年12月11日金曜日

ザ・マジックアワー




「太陽が消えてから周囲が暗くなるまでのわずかな時間、それがマジックアワー。昼と夜の間、世の中が一番きれいに見える瞬間。」

ある小さな港町。ギャングのボスの愛人に手を出した劇場の支配人が、凄腕のスナイパー「デラ・トガシ」を連れてくるという条件で命を助けてもらう。しかし、それは難しく断念。そこで、「殺し屋にみえて一番うれていない俳優」ムラタを連れてきて、自主制作の映画と偽って、デラ・トガシ役を演じてもらう。

ムラタは子供の時に見た『暗黒街の用心棒』に感動し映画俳優を志した。

「死ぬのは怖くない。怖いのは誇りを失ったまま、生き続けることだ。」

その主演のタカセマコトにその町で偶然出会う。

「そろそろだね、マジックアワー。一日のうちの最高の瞬間。それを逃すとあっという間に夜になる。ムラタ君、マジックアワーを逃したときの一番の方法を知っていますか?」
「さあ?」
「簡単なことです。明日を待つんだよ。マジックアワーは必ずまたやってくる。この世に太陽が昇る限り。ホテルのママからききました。役者辞めるそうだね。」
「俺はどうやってもタカセさんのようにはなれない。」
「そんなことは分からないさ。ここだけのハナシ、今でもカメラが怖くてね。本番の声がかかると足が震える。」
「まさか。」
「スクリーンの中の私が堂々と見えるのは、スタッフのお陰です。いいスタッフにめぐりあうことだ。『暗黒街の用心棒』のラストシーン、君は私の表情をほめてくれたね。」
「最高でした。」
「あれは、ロケが寒くてね。鼻水が出そうになって、それをごまかした顔さ。早いんじゃないかい。あきらめるのは。君は若い。それに、ここだけのハナシ、私だって待っているんだ。次のマジックアワーを。この年になっても、いまだにさ。このままクタバッテたまるかい」

ムラタに拳銃を渡されたタカセは見事な拳銃捌きをみせる。

テレビ放送の録画を見ただけですが、今年一番の映画だった気がします。もっとも、今年映画館まで足を運んだのは夏休みの「アンパンマン」のみ。今度は「プリキュア+シンケンジャー」を観に行くことになりそうです。

2009年12月9日水曜日

Climategate事件

今朝、池田氏のブログを読むと、地球温暖化に関する記事があり、リンクが貼ってありました。

温暖化がおこり二酸化炭素が原因だといわれているけれど、科学者の組織的な捏造があった。その発端となったのが、Climategate事件といわれる地球温暖化研究を推進していた研究者のメール流出事件だったわけです。

3年ほど前に大学時代のサークルの同期のメンバーで集まった時、そのうちの一人が地球温暖化の研究を行っていたので話をしてもらいました。ただ、私は人の話がまったく耳に入らない状態だったので(司会とか、その後のコンパの準備で)すが、話が終わったあとに参加者の一人が「地球温暖化ってアヤシイよね」と発言。その場は爆笑で終わりました。

気候とか社会現象とか経済とか、多数の要素が複雑に絡み合った現象に関する人間の予測能力なんか、たかが知れています。地球シミュレータを使おうが何をしようがそれは変わらない。「二酸化炭素が原因」と断定した時点で、眉唾と考えたほうがいいのかも知れません。事象間の「相関」は観測できるけれど、「原因」を観測はできない。できるのは「原因の推測」だけ。

COP15なんてコペンハーゲンでやってますが、意味あるのでしょうか?氷河期にむかっているという意見もあるし。

2009年12月8日火曜日

Cono Sur Cabernet Sauvignon Resevva 2008



「神の雫」の21巻は、ワイン事業部の河原毛部長の首を賭けて、雫のいるワイン事業部とレストラン事業部が白、赤、赤の3本のワインで勝負という話の後半を扱っています。

その2本目に持ってきたワインは、ワイン事業部は「レイニャック・キュベスペシャル」というボルドー、対するレストラン事業部は「コノスル・カベルネソーヴィニオンレセルバ・2007」というチリワイン。結果は、レストラン事業部の勝ち。レイニャックは約5000円なので、グラスワインでの提供は難しく、一方のコノスルは1000円前半なので、コストパフォーマンスは圧倒的。一青も、レイニャックのほうが単体としての完成度は高いけれど、コノスルのほうが新規のレストランには経営的な面からも優れていると。

そのワインとはビンテージが異なるのですが2008年のを買って飲んでみました。このワインすばらしいです。消費税込で1200円を切るのですが、一口飲むと「これはうまい」。1000円前半だと、ほかにもコスパの高いワインはあるのですが、その中でも出色のもの。「ケース買いもアリ」なワインでした。

追記:翌日余りを飲んだところ、最初の一口ほどのおいしさを感じず、普通の1000円代のおいしいワインに変身。

ちなみに、ワイン対決の3本目の赤に、テレビ版の「神の雫」で「神の雫」に選ばれた「シャトールピュイ2003」が登場します。このワインでワイン事業部が勝利し、河原毛部長の首が救われました。ちなみに、一青のコメントは「年代記。人と天の恵みが大地に刻みつけた静かなる年代記」。

2009年12月4日金曜日

幕末史



池田氏のブログで推薦されていたので、読んでみました。私的にはイマイチ。
昔読んだ江藤氏の「海舟余波」のほうがずっと面白かった。(絶版のようで、いまは古本でしか手に入らないみたいですね。)書き方、世界情勢に関する説明が平易、極力公平に書く、という点はこの本のいいとろです。とにかく分かりやすい。けれど、何か教科書っぽいというか、緊迫感にかけるというか。慶応大学の社会人相手の講義をもとにしたらしいので、その為かもしれません。

勝海舟の有名な「行蔵は我に存す、毀誉は他人の主張というこの言葉もないのも、私的にイマイチの理由。。

寺田屋事件でのおりょうさんのヌード事件は眉唾で、実際には宿の女将のお登勢さんがお風呂に入っていたときの事件らしいとか、天皇に対する当時の人々の考え方(あくまでも推定です)など、参考にはなります。慶喜は水戸徳川の流れを汲むので、天皇は絶対。一方、薩長の人々にとっては「玉」でしかなく、手の上で転がすためものだった、とか。

天使と悪魔(映画)



原作が結構面白かったので、DVDをレンタルしてみました。が、内容的にはイマイチ。

CERNの様子は映画のほうが、原作よりもリアルで、昔田無市にあった原子核研(核研)でラザフォード散乱の実験(学部3年のとき)をやったときのことを思い出しました。もちろん、核研とCERNでは規模が全く違い、私がやったのは半日で5万円の電気代のレベルだったのですが、CERNなんかだと一日で1億ぐらいなのでしょうか。筑波のトリスタンが一日1500万だと教えてもらったので、それから適当に「予想」しただけですが。

原作で絵的にもうすこし情報が欲しい点をカバーしてくれる点は映画のいいところなのですが、それ以上のものはありません。原作ではカメルレンゴ=教皇の侍従で死後はバチカンの臨時最高責任者(映画ではユアン・マクレガーが演じていましたが)の神に対する思い、キリスト教のこれから、あるべき姿についての演説など、結構深いのですが、映画ではそうしたものは絵的に面白くないのか、ほとんどない。でも、せっかくユアン・マクレガーを使うなら、そこをしっかりと映像化してほしかった。もちろん、原作もミステリーとして見ると、途中から主犯が誰だか分かってしまう点で、完成度は高くないのですが、それを補うだけのものはありました。

2009年12月1日火曜日

Chambolle-Musigny Robert Arnoux 2003



日曜日にパソコンをつけていると、ワインショップからメールが入り、ロベール・アルヌーのシャンボール・ミュジニーが入荷したので、特別価格で提供とありました。シャンボール・ミュジニーとか、ロベール・アルヌーなんて「神の雫」を読むまでは知りもしなかった名前だったけれど、今はちがいます。しかし、すぐにメールのリンクを辿ったのですが、すでに売り切れ。ロベール・アルヌー、シャンボール・ミュジニー、2003というビンテージで約6000円という値段が高いのか、安いのかはわからなかったけれど、メールの到着から1,2分で売りきれるというのに驚きました。

で、また別の日にパソコンを眺めていると、また同じショップからメールが。それにも同じワインが再入荷とあって、今度は意地でも在庫があるうちに確認してみようと思ってリンクをすぐに辿り、その時点では9本の在庫。しかし、そのWEBページをリロードすると8本に減少という感じで、どうも次々と買われていっている気配。すぐに注文しましたが、10分後に確認してみるとすでに在庫はなくなっていました。ワイン愛好家恐るべし、です。

クリスマスにでも飲んでみます。いままでブルゴーニュのワインでうまいと思ったことはないのですが、果たしてどうでしょうか?

追記:飲んだ感想としては、ピノでこんなに濃縮された感じのものは初めてで、最初は熱でやってしまったのかと思ったぐらいです。安いピノにある、すっぱくてシャバシャバなものではなく、ポートワインのような複雑で濃厚な雰囲気もあるワイン。でも、癖が強いわけではなく飲みやすくおいしくいただけました。もっと高いブルゴーニュを飲んでみないと、経験値が乏しくて判断ができません。


大きな地図で見る

VGN-T30/BをSSD換装の顛末


2005年1月に買ったVaio Type-T(VGN-T30B)のノートパソコンのOSやIE(あまりつかいませんが)の起動の遅さを改善しようと、ハードディスクをSSDに換装してみようと思いました。WEBでいろいろ調べたところ、SSDにはいろいろ問題がある。とくに、プチフリーズといわれる、しばらくレスポンスがなくなる現象が深刻で、データの読み書きの高速さというメリットがあるとしても、デメリットも大きい。けれど、最近のSSDはキャッシュを搭載して、プチフリーズ対策を行い、かなり改善されたとのこと。

VGN-T30Bの場合はハードディスクが1.8インチなので、なかなか適合するSSDがなかったけれど、それも状況が変わりました。いろいろ見ると、64GBでキャッシュがついて3万から4万ぐらい。でも、分解が大変そうなので、今回はPCエキスパートという業者の方に頼むことに。費用は6万超。SSDとの価格差2、3万。また、最近のネットブックの値段を考えると、ハッキリいって換装自体がバカです。

結果はというと、換装直後はすばらしく快適で、このパソコンの非力なCPU(CeleronM900MHz)でもまったく問題なし。起動も1分かからないし、サスペンドも高速、IEの起動も高速。いいことずくめだったのですが、先週末、起動はおろかSSDの認識さえしない状態になりました。しょうがないので、再度業者さんに修理、点検をお願いするのですが、ちゃんと治るのか?ちょっと不安です。やはり、6万出して素直に新品のパソコンでも買ったほうが正解だったかも知れません。

さらに悪いことに、あまりにも快適なので、別のノートパソコンのTYPE-G(VGN-G1KAP)、こちらは2006年2月に購入、のSSD換装もお願いしてしまっていることです。ちゃんと使えるようになることをお祈りしています。おかげで、現在は家で仕事が不可能な状態です。



続く

2009年11月23日月曜日

ブラックスワン



未来のことを予想できるのか?それに対するニコラス・タレブの答えがこの本には書かれています。結論は、「無理」。

理由は「人間はそんなに賢くない」「物理法則はカオスに代表されるように、すこし複雑になると手に負えなくなる」ということを上下2冊の分量で饒舌に語っています。予想のハズレ具合にマンデルブロは「フラクタル」を見出した、とか、その重要な発見を経済やファイナンスの人間は無視することにした、とか、ノーベル賞をとったブラック・ショールズのオプションの価格計算の公式はぜんぜん新しくもないし、そもそも正規分布を仮定したクレイジーな理論だ、とか。また、人は予測できない事象がおきても、後付の理屈で分かった気になるし、歴史の本はだから分かりやすいのだ、とか。

とにかく、長い本ですが、結論は「人には未来の予測は絶対にできない。出来たつもりでいると、思いがけないところで、予測されていない事にでくわす。それをブラックスワンという。」と三言ですんでしまう。

ブラックスワンに対処する方法は、悪いブラックスワンと良いブラックスワンをちゃんと見極めて、良いブラックスワンにのみに会うように、自分の行動のポートフォリオを組むというものです。タレブは金融のトレーダーでもあるのですが、安全資産の比率を高め、無茶苦茶ハイリスクな資産に少しだけ投資、というスタイルだそうです。研究者なら、良いブラックスワンに会う確率を高めるために、まじめにコツコツと研究しなさい、となるのですが。大学や研究機関の給料が安いからといって、間違っても競馬や株なんかやってはいけないと、ということでしょうか。

私も予測と結果の間にある法則性を研究しているので、タレブの言うことは基本的には正しいとは思っています。が、人には未来がまったく予想できないかというと、それも違う。例えば、天体の運動なんてのは、恐ろしい精度で星の位置を予測するし、天気予報も外れることはあっても、最近結構あたるようになっている気がする。一方、経済や社会に関する事象の予測は難しい。例えば、年末に雑誌で書かれる「来年流行しそうなモノ・事」なんてのは、1年後に検証すれば悲惨な結果になるような気が。では、予想と結果の間にはどのような法則性があり、どんな場合には予想可能だけれど、どんな場合には不可能なのか?また、その場合、どのような質的な違いがあるのか?

予想が難しい場合は「べき乗則」が見られると、競馬での万馬券の分布などを証拠に考えているのですが、果たして正しいのか?正しいなら、それは何故なのか?そろそろ結論を出したいところです。

天使と悪魔



今年の夏に映画が公開されたダビンチコードの続編「天使と悪魔」です。もっとも、作品的には「ダビンチコード」よりも前に書かれたもののようです。

話は、スイスにあるCERNという高エネルギー物理学研究所から始まります。ヴェトラ博士がビッグバンを加速器の中で再現することに成功し、その過程で反物質(反水素=反陽子と陽電子で構成)の多量(4分の1グラム)の生成と保存に成功したこと。その反物質を効率100%の核爆弾として、500年以上も前にガリレオにより結成された科学者たちの秘密結社「イルミナティ」がテロリストとしてバチカンに報復する。それを阻止すべく、ラングドン教授が活躍するというストーリー。

話の真偽はともかく、キリスト教にまつまるいろいろな薀蓄は面白いです。例えば、クリスマスは12月25日で、キリストの誕生日だと教えられていますが、そうではなく(正確な日はよくわからないらしい)12月25日は太陽信仰の人々を取り込むために、キリスト教会側が彼らにとって神聖な日であった冬至の日にあわせて設定した祭日である、とか。

ちなみに、スイスのCERNと書きましたが、大学3年のとき、早野先生に「原子核物理」を教わったとき、彼が「サーン、サーン」というのをきいて、無意味に「かっこいい」と思ったことを思い出しました。それまでは「セルン」と発音すると思っていたので。彼の講義は、ときどき眠ったりもしたのですが(一番前に座っているので、先生からは非常に目立つようで、講義のあと「面白くなかった?」と質問されたことも)、物理学科の講義の中では楽しめる数少ないもののひとつでした。しかし、何故か彼の「天使と悪魔」の解説ページでは「セルン」と書いてある。

映画の「天使と悪魔」が楽しみです。レビューを見る限り、原作を読んだ上で映画を見ると、あまり評価がよくないようですが、レンタルして見てみようと思います。

2009年10月17日土曜日

競馬の投票の時系列データの可視化



来月の国際会議Complex09で競馬の話をするので、そのネタに画像を作ってみました。英語の能力不足をカバーするには、派手な画像とかアニメーションとか、見るだけでわかるもの、楽しめるのものを使うのがいいので。

この画像の赤のドットが勝ち馬、青のドットが負け馬を表し、縦軸が時間軸で一番下が投票の開始、一番上が投票の終わり。馬は2008年にJRAで走った馬から500頭の勝ち馬、負け馬(計1000頭)をランダムにチョイス。横軸は得票率を表し、左が得票率が高く、右が低く、馬をその得票率(オッズの逆数)の順番で並べる。一番下の状態は投票データの第一回目に発表されたもので、約70票の投票後に馬を並べた状態。ほとんどランダムに並んでいます。そして、投票が進む(上側に)につれて、勝ち馬と負け馬が相分離し、投票の最後の方では得票率軸上で青と赤が分離している様子が確認できると思います。ちなみに、黄色いドットは、負け馬からランダムに一頭を選び、その時間変化の様子をプロットしたもの。

最終的には勝ち馬が左の得票率の高いほうに集中、負け馬は右の人気のないほうに集まるのですが、右端にも結構勝ち馬が存在していることがわかります。これが、「万馬券のスケール不変性」と呼んでいる現象です。それを説明する確率モデルや、その極限として現れる「完全にスケール不変なグラデーション」、競馬ファンの勝馬予想の精度がどのように変化し、それから何がわかるのか、を会議では話す予定。上の図を見せて、投票で馬が混ざる様子のアニメーションを見せ、式変形で完全なグラデーションを導く、まではいいとして、競馬ファンがどう予想を行うのかについて語るのは難しいかも。そもそも私が競馬をしないし。

2009年10月11日日曜日

Chateau Puygueraud 1995



「神の雫」の第7巻に登場するワイン。ただし、コミックではビンテージは2001年ですが。ワインバー「モノポール」のオーナーが昔の恋人と再開する場面で開けるワインです。このシャトーは、ルパンのオーナーであるティエポン家が1946年に荒廃しきっていたところを買い、それから30年の時をかけて、土壌改良し、ファーストビンテージは1983年。そのころから、ボルドーの一級シャトー並みの高評価を得ていたということです。

こういう能書きを「神の雫」で知り、興味を持っていたのですが、いつもワインを買っているショップのメールに1995のビンテージが入ったとあったので買ってみました。値段は税込みで2940円。で、結果はというと「ハズレ」。1995年はボルドーのビンテージもよかったと記憶していて期待したのですが。コルクを開けた直後は、香りはまあまあたっていて、しかしアルコールの舌を刺すような感じでイマイチ。数日後飲んだら、香りがなくなり、単にマズイワイン。数日後あけるのは論外なので、ちゃんと1時間後とかに飲むべきだったのでしょうが。

この一本でPuygeraudに評価を下すのはフェアではないかも知れませんが、もう一本買う気もおきない出来でした。

2009年10月1日木曜日

フィリピンと台風


先週末に台風「Ketsana」が来て、二百数十名の死者を出したフィリピンですが、今週末も大型の台風「Parma」が来るみたいですね。フィリピンには最近まで全く縁がなく、台風が来ようが大統領が誰になろうが、全く関心がなかったのですが。フィリピン人に英語のレッスンを頼むようになって以来、すこしは気に留まるようになりました。

調べてみると、物価が日本の10分の1から7分の1ぐらい。日本ではそれほどメジャーではないですが、韓国では英語の留学先として人気があるみたいです。

私が英語を習っている先生は医学物理という、私には意味不明の学問をやっているフィリピン大学(フィリピンで一番らしい)の修士課程の学生で、きれいな英語をしゃべるし熱心なので、いまのところはいい感じです。もっとも、毎回雑談して終わりなので本当に英語力がアップするのかどうか。私の心がけ次第でしょうけど。

2009年9月21日月曜日

馬券会計学



競馬の勉強に読んでみました。

内容は、「儲け=払い戻し額ー(馬券)購入額」なので、購入額を下げるために、新馬戦、未勝利戦に限定し、さらに馬を研究して絞り込む。払い戻し額を上げるために、万馬券を狙う」というシンプルなもの。これがこの本の売りの「3つのルール」。この新馬戦、未勝利戦に限定するというアイデアは浅田次郎氏も「おはこ」にしていたらしい、という点は興味深い。けれど、全体としてデータが貧弱(ほぼ皆無)で、説得力に欠け、結局自分で運営している競馬情報サイトのPR本でしかない。

例えばオッズが2倍以下の馬の勝率が5割であった。だから人気馬を捨て、万馬券を取りに行くのが正しい、という論理。2倍以上の馬の回収率は2倍以下の馬の回収率にも負けるか、せいぜい同じはず。また、新馬戦、未勝利戦に限定して、どう馬を選ぶのかについては、厩舎によって調教が異なるので、以下の厩舎の場合は要注意とか、パドックでの馬の見方を磨け、とか、本当かどうかもよくわからないか、または普通の人には無理な内容(なので、自分のサイトに来い?、なのか)。

浅田次郎氏の「おはこ」の作戦が分かっただけ、よしとしましょう。

田崎 統計力学I



田崎先生の「統計力学」の教科書の第1巻。昨年まで統計力学を講義していたのですが、自分で書いて配布していたテキストの内容が恥ずかしくなるぐらいの完成度の高さ、説明の的確さ、そして挿話的に語られる統計力学の発展史の面白さに圧倒され、彼の草稿(彼のWEBページから落とせる)を講義で配るようにしました(それ以前の講義も彼の「数理科学」の記事や佐々先生の「熱力学」に影響されて準備したので、根本的に変というわけではないハズです)。もちろん、この教科書のレベルの講義をやって、学生がついてこれるのか、というと無理だと思う部分もあります。実際、前書きにも教科書と講義は違うもの、とあるし。しかし、講義する側や本当に統計力学を理解したい学生は、この教科書で勉強するのがベストだと思います。というか、この本ぐらいしか説得力のある本はない。

この本で私が感心するのは、所々で語られる彼の「統計力学」に対する思いです。第6章の「結晶振動と結晶の比熱」では、「統計力学の真の目標は、普遍的な『物理』を最小限の物理的な性質だけに基づいて理解することである」。こう書くのは簡単です。しかし、この意味で『物理』を研究していくのは非常に難しい。ともすると、現象のデータに振り回されたり、数学にのめりこんだりして『物理』を見失ってしまう。こうした大事な点を、少々毒を含ませた(と感じるのは私だけ?)筆致で本文や脚注で書かれると、「正しい物理学者でありたい」と思ってします。そう思わせてくれる「熱い本」です。

とにかくお薦めの教科書です。

2009年9月16日水曜日

オークションの人間行動学



オークションでのホモ・エコノミカスの振る舞いに関する理論的な研究と、それに基づくホモ・サピエンスの振る舞いの理解を与える本です。というと、意味不明ですが、経済学的に合理的に振る舞うのがホモ・エコノミカス、いじわるだったり、感情に流されたり、理解していなかったりするのがホモ・サピエンスで、経済学はもともと前者を対象にしてきたのですが、最近は後者の本物の振る舞いを扱うのが流行っている。

この本は、オークションのいろいろな形式の紹介から始まり、ビッカレーやeBayなどの2位価格オークション(落札者が払うのは2番目に高い入札価格)や一位価格オークション(落札者は自分の入札価格を払う)で、買う側は入札価格をいどう選べばいいのか、とか、売る側はどういう開始価格や最低落札価格を選べばいいのか、といった問題を扱いつつ、理論的にはどのようなオークションシステムでも、売り手の得る収入は等しくなるといった「収入同値定理」の解説(付録ではその証明も)を行っています。

オークションでの人の行動を記述するアイデアを学ぶのはいろいろと楽しいです。1章を読んでから付録のAを読んだほうがいいでしょう。

業務連絡:F君、この本を渡すので月曜の報告会でネタがないときにでも発表すること。付録Aをみなに分かるように。

2009年9月15日火曜日

競馬でオープンレクチャー


11月7日(土)に競馬を題材に高校生向けの講義をおこないます。そのためのPR用のビラを作成してみました。この講義で話したい内容は、「予測市場でなぜ未来が予測できるのか」について、現在まで分かっていることをベースに、競馬の投票データから競馬ファンの投票行動、予測行動について何が分かるのか、といったことです。予測と結果の間のスケール不変性や投票モデルの数理などをまじえて(時間がなければ、これらの部分はパス)1時間講義します。そのあと、パソコンを使ったデータマイニングの実習を行って、データから予測モデルをどうやって抽出するのか、について解説しようと思います。データマイニングはまだまだ勉強が足りないのですが、楽しめるものにしたいと思っています。

しかし、高校生に「競馬」を講義してよいのか疑問なのですが、入試広報からオープンレクチャーを依頼されたときに、「競馬が駄目ならクレームが来てポシャる」と思いきや、そういうこともなく。

それよりも問題なのは、「予測市場」とか「競馬」で果たして高校生が来るのかという点です。高校生といわず誰でも参加OKなので、興味のある方は是非お申し込みください。申し込み数ゼロというのは悲しいので。

追記:卒研生のみなさまはご招待します。来なかったからといって、卒業延期にはしません。たぶんね。

2009年9月2日水曜日

実践データマイニング



今週末に慶応で行われるデータマイニングの勉強会の予備知識として、また、2009年度の卒論のテーマのひとつが競馬予想ということもあり読んでみました。

内容は、決定木、ニューラルネットワークを用いて競馬予想(一番人気が取れる条件を明らかにする)、日経平均予想(現状の値が天井、底からどの程度の位置にあるのか)を行うというものです。また、こうした実践のあと、最後の章では、データマイニングで得られたニューラルネットや多重線形回帰の式から、人間の理解できるルールに翻訳する方法の紹介をしています。

私の競馬の興味は、オッズの数字の生成起源なので、オッズを用いたデータマイニングには興味はないのと、また結果も「もうからない、回収率80%前後で馬連の75%とほぼ同じ」なので、競馬に関してはイマイチ。日経平均予想の部分は、やたらとグラフが多い点は、もうすこし簡潔に書けるのではと思いましたが、結構成績がよいので、その点では感心しました。ただ、筆者は実践したら損したとあるので、まだまだなのでしょうが。

大変参考にはなる本だと思います。特に、ルールの抽出部分は、いろいろ勉強してみたいと思いました。矛盾しててもしいから多数のルールを生成し、そのルールの多数決でシステム全体を記述できるのか、とか。競馬のオッズの生成も最後は多数の多様なルールに基づく投票モデルでないと、理解できないという印象を持っているので。

業務連絡:I君、がんばって読んでくること。この本の次はニューラルネットの本を渡す予定です。

2009年9月1日火曜日

Vine Linux 5.0


デスクトップPCとType PのLinuxを最新版のVine Linux5.0 (2009.8.24公開)に入れ替えてみました。Vine Linuxは最初からTeXが使えるのが一番気に入っているところで、今度のももちろん使えるのですが、エディタのEmacsが入っていないのには驚きました。あとは、グラフィックライブラリのEGGXをいれて、研究環境完成。gccとrubyそれにLatexと、Emacsだけで研究をしているので。

最近、日本語入力が不安定だったことがVine Linux 4.2の不満点だったので Ubuntu Linuxも考えたのですが。最新のVine 5.0ではどうなっているのか、使い込んでみようと思います。

追記:TYPE Pの解像度が「1024*600」、いわゆるネットブック解像度となってしまうのですが、私にはそのぐらいが丁度いいです。(たぶん、ちゃんと設定すれば高解像度にできるのでしょうが。)

追記2:しばらく使ってみましたが、どうも使いにくい。Vine 4.2に戻すことにしました。ちょっとガッカリです。Ubuntu に慣れたほうがいいのかも知れません。

2009年8月27日木曜日

やさしい電子物性



講義の準備のために読んでみました。工学部の学生さんにむけて書かれているようで、フェルミ分布の説明、計算など、統計力学的な側面の説明がほとんどない。理学部物理学科の学生が読むのには、ちょっと物足りない、という印象です。

工学部ではどう教えるのかについては勉強になりましたが。

2009年8月25日火曜日

レッドクリフII



「レッドクリフII」をDVDで見ました。

トニーレオンが周愉っぽくないと以前書いたのですが、楽しめる作品。とにかくスケールがすごい。「グラディエーター」の最初の、ゲルマンとマルクス・アウレリウス帝率いる(実際には、マクシマスの騎馬軍団の活躍を見に来た感じですが)ローマ正規軍の激突以上の迫力。CGの技術の進化もありますが、ベースになる物量が大きければ、CGでさらにその迫力が増す。それがうまくいって圧倒的なスケール感を持った映画になっています。

劉備軍、孫権軍に疫病がはやり、劉備が「このままだと全滅だ。私はこれ以上負けるのが嫌だから撤退する」といって、本当に撤退したときは、私もだまされました。それはないでしょう、と。しかし、それも孔明と周愉の作戦。曹操は、劉備と孫権の離反を知って、孫権のみに注意を向けるのですが、劉備軍は孫権の火計と同時に、曹操の本陣のある鳥林を急襲します。

最後は、オールキャストが揃い、曹操にバイバイして終わるところは、ちょっとありえない気もしましたし、北方三国志を読んですぐなので、違うんじゃない(どちらが本当かは私には分かりませんが、たぶんどっちも違うのでしょう)と思ったりした部分もあるのですが、上記のようにスケールの大きさで圧倒されるいい作品だと思いす。

2009年8月24日月曜日

新しい物性物理



今年から固体物理学の講義を担当することになったので、参考資料にと読んでみました。著者は伊達宗行氏。物性物理、特に磁性研究の権威です。固体物理、物性物理の勉強は、大学4年のときに講義を受けて以来なので、もう20年近く昔ということになります。当時もあまり興味がない分野ということもあり、そんなに勉強した覚えはないのですが。

内容は、「物性物理」という名称が日本独自のもので、固体でもなく、凝縮体でもなく、物の性質を広く研究対象とすることが分かる素晴らしい名前なのだという点から始まり、原子、結晶構造、エネルギー準位、バンド構造、超伝導とスタンダードに話が展開していきます。後半では、スピントロニクス、ナノテク、カーボン科学、そしてT,P,Hが無茶苦茶小さいとかデカイ、極限科学の世界の紹介、と盛りだくさん。後半、すこし説明が端折ってあって、読むのがつらい部分もあるのですが、物性物理の最前線がどういうものかの感じをつかむのにはいい本です。

誘電率をコントロールして光にバンド構造を持たせるとか、強磁場下でバンド構造がフラクタルになるとか、半導体を素材に人工の原子を作るとか。物性物理って楽しいですね。しかし、私が固体物理の講義をやっても大丈夫なのか、まだまだ不安なので、もっと勉強の必要がありそうです。

2009年8月21日金曜日

北方三国志13



「死せる孔明、生ける仲達を走らす」が有名ですが、北方三国志には、この言葉さへ現れません。司馬懿は、ひたすら孔明との決戦をさけ、堅陣を組んでそこからは一歩も出ようとしない。孔明も、長安攻略を考えるが、挟撃のリスクから動けない。最後は擁州の西部に軍を散開し、西部制圧後に長安を奪取という局面の打開を謀るが寿命がつきてしまう。劇的な場面もほとんどなく、淡々と孔明の最後を描いています。

長安は、そこにある。洛陽も、遠くない。いまの軍だけでも、侵攻は可能だ。しかし、擁州西部が加わる。涼州もなびいてくる。大軍になるのだ。
中原まで制すると、次はどこになのか。河北か、それとも呉か。
「天下統一は、遠い夢でありましたな、殿。」
孔明は劉備に話しかけていた。・・・・。
「しかし、殿。我々が目指した天下とは、なんだったのですか?」

なんでもかんでも背負い込んでしまい、燃え尽きた孔明の負けなのか。

北方三国志では、漢の血を守り抜くことが、万民にとって平和な社会をもたらすことにつながる、という思想が底流にあります。劉備も孔明も、そして登場人物の多くがその考えに同意している。だから、漢の旗を揚げれば、多くの人が集まってくる。一方、曹操は、漢の血は腐ったのだから、覇者が帝になるのが正しいと考える。その考えが、荀彧(劉備に近い)との軋轢を生んだりもしますが、曹操の考え方のほうが中国では普通の気がします。実際、秦から漢に変わるときも、そうでしたし。、また、漢以降の中国の歴史は「易姓革命」と呼ばれるように、毎回、新しい血(姓)が皇帝になってきたのだから。一方、日本は万世一系の天皇制。天皇家は続き、為政者のみが次々と変わっていく。藤原氏、平氏、源氏、足利氏、などなど。

多分、北方さんは天皇制が好きなのでしょう。

それはともかく、三国志が堪能できた全13巻でした。

2009年8月19日水曜日

北方三国志12



「泣いて馬謖を斬る」。3度目の正直で、孔明が魏に侵攻。その作戦は、さすが孔明とうなるほどのもの。魏軍を蜀軍の本体にひきつけておいて、超雲、魏延の遊撃部隊に長安と魏の新皇帝曹叡を急襲を命令。魏への侵攻に際し、孔明は蜀の新皇帝劉禅に諸将の前で「出師の表」を捧げる。しかし、馬謖の軍令違反により、蜀軍は撤退をよぎなくされる。

北方三国志では、魏に侵攻するときに孔明が考案したとされる様々な新兵器の記述も、さらに出師の表でさえ記述しません。単に、「劉備が死んだ時から説き起こし、いまの蜀の状態を憂い、臣の道を唱え、帝たる劉禅の心得を語っている。」でおしまい。「これが孔明なのだ。・・・。一片の嘘もなく、微塵の甘さもない。そのくせ、誠実さと慈愛には溢れている。ほかの誰がこんな言葉を語ることができるのか」と馬謖に語らせるだけ。

馬謖と語り合う孔明。
「私の死が、いくらかでも丞相のお役に立つのでしょうか?」
「蜀という国に、役立つ」
「ならば望外の喜びです」
不意に孔明の眼から涙がこぼれ落ちるのを感じた。それはとめどなかった。
「丞相が、私のために泣いてくださいますか」
「さらばだ、馬謖。父と子のようにして過ごした歳月を」

そして、超雲も死に、五虎将軍は誰もいなくなってしまった。最後の13巻での孔明の死に様、司馬中達との死闘が楽しみです。(しかし、漢字の変換が大変だ。)

2009年8月17日月曜日

北方三国志11



孫権に関羽、超飛を謀殺、暗殺され、孫権の首を獲るべく呉の荊州に侵攻した劉備。それに合わせ、魏に擁州から侵攻し、一気に魏と並ぶ国力の獲得を狙う孔明。しかし、呉の指揮官陸遜は劉備軍を700里の隘路に導き、撤退に撤退を重ねて最後に袋のねずみにする作戦で壊滅させる。劉備は何とか蜀の白帝城(永安)に帰還するも、最後は病に倒れ帰らぬ人となる。劉備、曹操の時代は終わりを告げ、孔明、孫権、曹ヒによる三国分裂に時代に突入する。

敗戦後、孔明はひたすら蜀の国力回復に努め、報告できる状態になるまではと劉備とは会おうとしない。一方、劉備は敗戦のショックと病気から、自分の後のことを伝える気力もない。しかし、最後の気力を振り絞り、成都の孔明に使者をおくる。

「成都に、使者を出せ。孔明を呼ぶのだ」
永安から出頭命令が届いた。それはまさしく劉備の命令であり、書面を開いた時、孔明は手のふるえを止められなかった。
・・・・・・・・
寝台に横たわっている劉備と、眼が合った。不意に涙がこみ上げてくるのを、孔明は止めることができなかった。
「やっと、お目にかかれました、陛下」


昔読んだ三国志の記憶では、これからジリ貧というか、孔明の頑張るだけの話になっていくのですが、北方三国志は読ませてくれそうで、楽しみです。残るは、12,13巻の二つのみ。

2009年8月6日木曜日

「渋滞」の先頭は何をしているのか?



友人から、「こういう本なら売れる」と言われて渡されたので、読んでみました。西成氏の本は、新潮の「渋滞学」以来の2冊目です。内容的には「渋滞学」の内容をさらに発展させ、かつ説明も洗練されています。「渋滞学」では、自然渋滞がメタ安定な状態(水でいうと、凍ってもおかしくない過冷却の状態)が壊れることによる自由流の相から渋滞相への相転移だという点をモデルで詳しく解説していたのですが、この本では、本質だけを説明してモデルの詳細な部分は省略。そして、他の渋滞のメカニズムである「ボトルネック渋滞」、「ダンゴ渋滞」を解説しています。

また、渋滞の解消方法として、車間距離をあける、ブレーキを踏む回数をへらす、や、それを教育で広めること。また、雑学的に、「渋滞のし始めは左車線があいている」「高速道が渋滞していたら一般道も80%以上渋滞している」など、読者の興味をひく内容をうまく散りばめています。最後は、笑い、生物、経済、社会、病気、災害、インターネットを渋滞の観点から眺めるとか、盛りだくさん。防衛大学の学生が複数で歩くときは隊列を組む、とか、小学校の運動会の場所取りで一番込むが開場直前だが、その次は30分前だとか。

個人的には、こうした雑学の部分が面白かったのですが、それ以外では、カーナビでの誘導が「ハンチング現象」と呼ばれる不規則でカオス的な振動を引き起こすという点でした。論文を書いているみたいなので、ちょっと調べてみたいと思っています。

2009年8月1日土曜日

Chateau Le Puy 2003


テレビドラマの「神の雫」で「神の雫」に選ばれたのは「Chateau Le Puy 2003」というワインでした。

「神の雫、それは永遠なるもの。地上で何が起きてもゆらぐことはない。そこは、果てしなき遠い扉の向こうにある。あらゆる使徒を従わせ、私は今その扉を開く。神に続くその道は、さまざまな時を越えてただひたすらに遠くそして深く大地へ続く。私はその道を歩むことに興奮を抑えきれないでいる。人間も自然もただそこに営々と続く。このワインはまさに神が作り出したひと雫である。」

テーマは、「永遠なるもの、それは受け継ぐこと」。そしてワインは「Chateau Le Puy 2003」という筋金入りのビオワインでした。「永遠なるテロワール、400年もの長きの間、一滴の農薬も使わず、葡萄の木々は地中70mの深くまで根をはり、猛暑で各地の葡萄の木が枯れた2003年でも見事なエレガントなワインを生み出した。」

このワインをネットで売っていたので買ってみました。ただし、フルボトルではなく500cc入りの瓶で、たしか4200円。ワインの感想は、普通においしいワイン。ボルドーらしい、でもアクも強くなく、するすると飲みやすい。4200円出すなら、もっとおいしいワインはいくらでもあるでしょう。でも、「神の雫」なので、スプレッドも納得できる範囲です。

マンガのほうの「神の雫」は何なのか?楽しみです。

追記:一緒に飲んだ友人いわく「まずい、うまいでなく、正しいワイン」。

追記2:chateau le puy の紹介ビデオ

本「北方三国志7」


いよいよ「レッドクリフの世界」、赤壁の戦いです。

荊州の江陵をベースに三十万の曹操軍が長江を下る。一方、揚州水軍を率いる周諭は、十三万の兵力の十万をずっと下流域に分散させ、残り三万で陸口に布陣。この作戦は、長江全体を水上戦に不慣れな曹操軍の罠とする、というもので、曹操がそれに気づくことも計算している。周諭の三万と劉備の三万で曹操は鳥林に布陣するしか選択肢がなくなる。三万という兵力も、多すぎれば曹操が陸戦に切り替えることを計算してのもの。あとは、風向きが北から南に変わる一瞬の隙をついて火攻めで曹操軍を破る。曹操軍が燃える火で石頭関の崖が真っ赤になったので、以後「赤壁」と呼ぶ。


昔読んだ本では、孔明が七星壇に登って祈祷し南風を吹かせたとか、眉唾な感じがあったのですが、北方三国志はその点説得力があります。曹操は油断していたのでしょうね。

赤壁の後、関羽が自分も劉備も五十を超えるのに、周諭は三十五、孔明も三十と若く、すこしあせります。
「天下に届かなければ、なんのための志だったのですか?」
「急げば届くのか、関羽?」といって嗜める劉備。
その後、赤兎馬の子供を貰い、関羽の気持ちもすこし治まったのか?なぜか印象に残る場面でした。

2009年7月31日金曜日

ふたつのスピカ


NHKのドラマ「ふたつのスピカ」の最終回を見ました。



主人公アスミの友人でもあり、最強のライバルであった鈴木君のアスミへのビデオレターが泣かせます。鈴木君の四十九日に出るのかどうかで、友人かどうかを判断しようとする残された友人たち。鈴木君の交代要員となったアスミはNASA留学の訓練がその日もあり、それに出ないような人をクルーとして受け入れられないという教官。鈴木君のビデオレターは、板ばさみのアスミの背中をこれでもか、と強く押す役目を果たす。「どんなにつらい日々であっても、それは僕がすごしたかった日々なんだということを忘れないでほしい」。鈴木君役の中村優一さんの演技は感動的でした。こんなことを言われて、がんばらない人は人ではない。

今日で期末試験も終わり。しばらく休んで、8月頭から研究を再開しようと思います。競馬研究もあるし、2ちゃんねるもあるし、相関二項分布もあるし。

2009年7月30日木曜日

本「北方三国志 6」



ついに三国志の主役?諸葛孔明の登場。「三顧の礼」を尽くし、劉備が軍師として迎える話が有名です。北方三国志では、劉備と孔明の内面まで描写しようとする。たしかに、三国志演義では神様のような活躍をする人物が田舎の田んぼを耕して、そうした人生に満足できるのか?自分の能力を試してみようとは思わないのか?こうしたことを考えると、孔明の心のなかは北方氏の描くような、鬱々とした思いがあったのかも知れない。また、劉備にしても、流浪の6千の流浪の軍の隊長にすぎない身で、人をどう説得するのか。

結局、お互いの志を、思いをぶつけることでしか、人は動かないし、また動かせない。そこを描いているのが北方三国志なのでしょう。

一方、曹操は南征の準備を完了し、ついに出撃。荊州北部を制圧し、残るは劉備(荊州南部)、孫権(揚州)そして馬超(涼州)、益州(劉璋)のみと、その覇業も完成に近づきます。第7巻は、「レッドクリフ」の世界です。しかし、レッドクリフの周瑜は、もっと美男子を使ってほしかった。周喩にある切れ者のイメージがトニーレオンには感じられないし、なにより周喩は美周郎とも呼ばれた人なのだから。

2009年7月25日土曜日

本「『多様な意見』はなぜ正しいのか?」


集合知のメカニズムをサンタフェの複雑系の研究と絡めて理解し、解説した力作。
内容は、ここにうまくまとめられています。関係ないですが、こういう読書メモを残すのは大事なことかも知れないと思いました。


内容は、多様な集団がなぜうまく問題解決できたり予測できたりするのか、という点を、問題を捉える観点、観点のカテゴライズ、問題を解くテクニック、予測のテクニックについて準備し、多様な集団だと、一人や一様な集団ではトラップされる困難も乗り越えられたり、一人一人の予測にある誤差をお互いに打ち消しあうからだと説明する。その説明に用いている例も簡潔で分かりやすい。後半では、多様な集団は多様な価値観を持つことにより、集団としての優先順位がつけられなくなるというアローの定理などを説明し、集団がうまく機能しないこともあること。それでも、多様な価値観が多様な問題を解くテクニック、予測のテクニックにつながりもすることなどを解説。

競馬ファンがいかにしてオッズを生み出すのかに興味があったので、大変参考になりました。競馬ファン一人一人が異なる予測方法(モデル)を使うことにより、また、勝ち馬をあてないと損するといいう淘汰圧により、適度な淘汰圧がかかった状況での多様性が保たれる。(万馬券をとるには、人とは異なる予測モデルを用いる動機となり多様性の源となる。まったく見当はずれな予測モデルを採用すると損ばかりして、競馬の市場から排除される。)こうして競馬の市場では、驚くべき効率性が実現することになる(得票率=勝率となる)。では、これを人工市場で再現可能なのか?また、たったひとつの予測モデル、ただし、むちゃくちゃ多数のファクターを持つ複雑なモデル、では競馬ファンの多様な集団に勝てないのか?などなど、いろいろ調べてみたいと思っています。(物理の論文になるとは思えないけれど。)

2009年7月17日金曜日

PC:Vaio Type P


XPモデルが出たので買ってみました。用途は学会とかの出張でのプレゼンと、メール、WEBのチェックぐらい。オニキスブラックの外観にダークブラウンのキーボード。まあまあ気に入って遊んでいます。しかし、さすがに文字が小さい。パワポを修正するぐらいはできそうですが。
さっそくUbuntu Linux 9.04をインストールし、シミュレーションもできるようにはしましたが、そういう可能性のあるときはちゃんとしたノートパソコン(現在はType-G)を持っていったほうがいいみたいです。でも、モニターの解像度の高さ、ドットの細かさ以外は使いやすいマシンです。

2009年7月12日日曜日

本「競馬の壷」


競馬本です。アマゾンで高評価だったので読んでみました。

競馬は本来、結果論でしか語ることができない。しかし、レースの攻略パターンを数多く持っていれば、そして、そのパターンを使いこなせるようになれば、精度の高い的確な予想ができるようになるだろう。
と始まり、
「予想とはそのレースでもっとも能力を発揮できる可能性を持った馬を見つけることである」
と締めくくる。

で、あとはいろいろな解説が続きます。競馬の知識をつける上では有用ではある。けれど、京大式と同じで、解説が統計でおさえられていない。レースの攻略パターンがあるとしたら、それはルールとして表現でき、そのルールの正しさはデータで検証可能なはず。それがない。
でも、競馬予想を考える上でいろいろヒントが得られそうです。

2009年7月8日水曜日

本「棟広馬券塾」


「7日間で学べる京大式万券ワークショップ」というサブタイトル通り、一日目から7日目までの講義+補講の形式になっています。「万馬券を狙うのが正しい」という一日目から、総流しの買い方の推奨など。基本は、前走で悪くオッズが高い馬がいた場合、前走の条件がその馬にあわなかったからかも知れない、とかと考えて、そうした馬の檄走することを期待して万馬券をとりにいく、ということみたいです。学べるアイデアもあるかとは思うのですが、「京大式」とつけるなら、もっとデータで裏付けてほしいものです。普通の競馬本、「こういう買い方だとこんなにもうかる」と何ら変わらない。

2009年7月4日土曜日

マンガ「神の雫 20」



第6の使徒対決。テーマは「宇宙」で神崎の意図は「人間の本当の優しさ」「旅立ち」。そしてワインは「バローロ」。

一青は正統派の「ブルーノ・ジャコーザ」、雫は革新派バローロボーイズのルチアーノ・サンドローネの「カンヌピ・ポスキス」で、雫の勝ち。一口飲んで自分の負けを理解し納得する一青。

「男はね、負けてその敗北を認めなおかつ糧にすることでしか成長していけない生き物なんだ」と語るモノポールオーナー。


バローロはまだちゃんとしたのを飲んだことがないので、ジャコモ・コンテルノの正統派のとか、バローロ・ボーイズのものとか飲んでみたくなりました。しかし、値段が1万を超えてしまうので、ルチアーノ・サンドローネの「ネッビオ-ロ・ダルバ・ヴァルマッジョ-レ」あたりを探してみようと思います。

2009年6月30日火曜日

本「北方 三国志3」



劉備は呂布に漢王朝のもとで同盟し曹操と闘おうと誘う。けれど、呂布は
「馬がいて、檄がある。鎧を着て、敵と打ち合う。それが戦のすべてだ、と俺は思っている。そこで、俺は生きている。だから、戦をするのだ、劉備殿。・・・・。国は民。その考えが、すべてのものに貫かれていれば、俺はそれでいい。」
「軍人は、兵を精強にし、その場の戦いをどう闘うかだけを、考えていればいい。」
といって劉備の誘いを断り、曹操との決戦に臨む。
武人のなかの武人、呂布。決戦で唯一の友、赤兎馬が傷つき、別れを告げる。そして、最後は40騎ほどで曹操軍に突撃し戦死。
英雄の中の英雄、呂布の最後。

一方、公孫さんを袁紹は滅ぼし、北部4州を完全に掌握。いよいよ華北の統一に向け、曹操と袁紹の戦いへと話は進んでいきそうです。

昔から、劉備がイマイチ好きではなく、「三国志=孔明」だったのですが、何年か前に読んだ「蒼天航路」で曹操も面白いと思うようになり、今度の北方三国志で呂布というキャラも興味を持ちました。4巻以降も楽しめそうです。

2009年6月21日日曜日

本「北方 三国志2」

孫堅が死んでからの話。

袁紹と袁術が巨大勢力を維持するなか、曹操が青洲黄巾党100万を3万の軍勢で制圧し、信仰の自由の代わりに青洲兵5万を配下に加えたり、孫堅の息子孫策が袁術の猜疑の目の中、挙兵に成功し、着々と揚州を支配下に置き始める。一方、劉備は徐州を譲られるが、計算の上、呂布に乗っ取られた形にする。曹操と孫策がようやく翼を得て力を存分に発揮し始めたところでしょうか。

途中、劉備が、漢王室が400年ではなくずっと続いていくことが国としてのまとまりを生む、万世一系の天皇のような存在としての皇帝という考えを披露するのですが、こうした考えが本当にあったのかは疑問です。始皇帝のあとを漢王朝が引き継いだわけではなく、戦いの勝者として劉邦が前漢という王朝を立てたのだし。400年も続くと、無限に続くのがいいことだという考えがあっても不思議ではないので、完全否定はできないのですが、すこし違和感を持ちました。もっとも、劉備は自分が漢王室の流れを汲むことに正統性を置いているので、彼がそう主張する理由はありますが。

東のエデン

「東のエデン」というアニメ、監督が神山氏ということで見てみました。
TV最終回を見終わっての感想は、「また集団知!」というのと、100億つかって日本を改造するアイデアとして目新しいものはない、ということ。でも、アニメとして面白く見られる作品ではあるので、今年から来年にかけても映画でどこまで話を広げられるのか、また深くできるのか、興味深いところです。

最終回で主人公滝沢は2万人のニートの直列化(集団知)を使って60発のミサイル攻撃から日本を守ることに成功する。そして最後に、「この国には頭のいひとは多いけれど、損な役回りをするやつはいない」と語ってJuizに王様になれるよう手配を頼む。「人は易きに流れる」と語った攻殻の2nd GiGのグゼを思い出すのですが、では滝沢はグゼを超えられるのか、それともグゼのようにネットに逃げるしかないのか。

映画が楽しみです。
http://journal.mycom.co.jp/news/2009/06/19/008/index.html

2009年6月20日土曜日

本「北方 三国志1」


久しぶりに三国志を読んでみました。中学以来なので二十数年ぶり。
1巻だけしか読んでいないの、まだ諸葛孔明も出てこないし、中国が3国に分裂しているわけではなく、曹操、劉備、孫堅、董卓、呂布などが登場し、徐々に大きくなったり、または孫堅のように流れ矢で突然死んだり、

劉備のもとに関羽、張飛が集まり、義兄弟の誓いをする場面は美しいです。人は、権力、名声、金ではなく志のある人のもとに集まり、その人に人生をかける。そういう時代が昔はあったのだなと。また、乱世というのは、そうした人が現れ、時代を動かすのかもしれません。

呂布は一言でいうと悲しい野獣。圧倒的に強いし、その意味ではカッコいいのですが。それと比べると、曹操の記述はあまりよくない。北方さんが誰に思い入れをして書いているのか、なんとなく分かる気がしました。

2巻以降を読んでいくと、この印象は変わるかもしれませんが。

2009年6月18日木曜日

本「1番人気鉄板の条件・消しの条件」


競馬の基礎知識を得るために読んでみました。競馬の研究をしているといっても、レース、馬、騎手、調教師などの詳細は一切みずに、ただ得票率、得票数、着順のみを対象として、物理、数理として面白いものを探すことをやってきたのですが、その一方で競馬ファンはどうやって馬の強さを判断し、それをオッズという数値に込めるのか、にも興味があったので。

この本は、そうしたオッズの生成メカニズムではなく、一番人気となった馬が実力を発揮できる条件を明らかにし、その上で3連単(複)の買い方を指摘しています。データ数がすくないので、どこまでそれが正しいのか微妙なところもあるのですが、いい勉強にはなりました。参考にはなります。

2009年6月15日月曜日

本「経済物理学の発見」

高安先生の経済物理の入門書。彼の講演は、平易かつ明快なのですが、そのよさが本書でも生かされています。

為替の変動は95%が正規分布で残りの5%の大変動の部分で為替変動のほとんどの部分が記述できることをグラフで示したり。また、金融工学では、その小さな95%の部分で派生商品のプライシングを行うこと。そのほか、新たなバスケット通貨の方法、税制の提言、経済物理の研究手法の解説など。

私もここ5年ほど、連鎖倒産とか競馬とか、経済物理っぽいことを研究しているのですが、経済物理って面白いのでしょうか。なんか微妙なものを感じてしまします。ようするに物理学としての夢、哲学に欠けているような。経済を理解するのは経済学であるべきで、物理と名乗るなら物理になんらかの新たな知見をもたらすものであってほしい。フラクタルの概念は経済物理の成果だとするなら、それは新しいし、大きな貢献ではあるのですが、それも50年近く前のことだし。

以上、自戒の念もこめた感想です。

2009年4月25日土曜日

パンフレットの図



統計物理グループ紹介用の画像を作成。

左の図は、赤と黄色の玉をそれぞれ1000個用意し、異なる相対重みでランダムに引き抜くことを玉がなくなるまで繰り返し、選んだ順番に玉を並べて描いたものです。
相対重みが1の場合は、赤と黄色がランダムに出現し、2種類の玉が完全に混ざったパターンとなる。それが、図の下のほうのパターン。y軸を上にすすむにつれて赤の重みを増していくと、最初に赤玉をとる確率が増加し、黄色の玉は最後のほうに選ばれるようになる。つまり、2種類の玉が相分離を起こす。
この相分離が興味深いのは、右端から数えたそれぞれの色の玉の数がお互いの巾乗に従うことです。つまり、「厳密にスケール不変な相分離」となっていること。このパターンが競馬の投票モデルの二重スケーリングリミットに現れる、というのが論文の趣旨です。ちなみに、現実の競馬でも万馬券の分布が同じスケール不変性を示します。


ちなみに、右図は同じ方法でトリコロールのスケール不変変形を
おこなったものです。こっちはイマイチ美しくないですね。


追伸:イマイチということで没になってしまった。