2011年11月20日日曜日

Gutenberg=Richter則

11月17,18の二日間、新潟大学の家富先生に経済物理学入門の講義を聴講。同僚の猿渡先生が、理物(東大理学部物理学科)の同期だということで、お願いして実現したもの。4年生の理学特別講義なのですが、統計物理が必修でないことなどを事前に猿渡先生が連絡していたようで、難しい数式もほとんどなく、娘さんの写真も含め、登場人物の写真が多数使われた目に優しい内容でした。確率の把握の難しさとしてMonty Hall問題から始まり、ブラウン運動、対数正規分布と株価変化、岩石破壊での破片や富の分布、地震エネルギー分布のべき乗則。そして、最後はネットワークの話で、ネットワーク科学の基礎的な解説、可視化、そして最後に企業間の取引ネットワーク構造の研究の話。興味深く、多岐にわたる内容で、学生さんにもよかったと思います。(家富先生、ありがとうございました。)



で、ここからが本題。課題として、地震の頻度分布のデータから、エネルギー分布がべき乗則に従うというGutenberg-Richter則が成り立っていることを示せというものが出されました。図が、x軸をマグニチュードM、y軸に地震の頻度(赤印)をプロットしたもの。べき則則でフィットする場合、ある大きさ以上の頻度という累積を使うほうがよいので、それも描(緑印)いています。グラフを見ても、累積にしないと地震規模の大きな端の部分は頻度が小さく、頻度分布のグラフはばらつく。一方、累積のほうは、ある規模以上の地震の数なので、そのばらつきが抑えられる。で、10のb乗に比例するとして、フィットした結果が直線で描かれています。このフィットで問題になるのが、どこをフィットするのかということ。図ではMが5以上、6以上、7以上でフィットしています。すると、6以上と7以上だとbの値がほぼ1で大体等しくなっているので、bは1と結論するわけです。

経済物理などの本に限らず、物理で社会現象を説明する本によくあるのがこの手のべき乗則の話。べき乗則に従うから、一見複雑に見える現象でもその本質は単純な物理法則で説明できるとか書いてある。じゃ、本当にべき乗則なのですか、と真剣に調べたのがニューマン:SIAM Review 51, 661-703 (2009)。例えば、上であげた富、地震の規模のほかに戦争の規模、インターネットの接続数、言葉の出現頻度など、ありとあらゆるデータに対し、べき乗則だとしたときのp値や、指数分布や対数正規分布などとどっちがよくデータに合うのかという比較を行ったものです。


すると、ほとんどのデータは「べき乗則とはいえない」という結論になる。上記の論文のp27にp値の表があって、それを見ると「地震は0」「富も0」。こんなプアなフィット(図の直線のフィット結果)が実現することはないから、べき乗則ではない。唯一、言葉の出現頻度はべき乗則で、地震や富はカットオフのあるべき乗則(つまり、あまり大きなところはべき乗則ではない)が妥当。他の多くのデータも、べき乗則に従っているといってもしいし、他の分布に従っているといってもいい微妙なものである、と。

In particular, the distributions for the HTTP connections, earthquakes, web links, fires, wealth, web hits, and the metabolic network cannot plausibly be considered to follow a power law; the probability of getting by chance a fit as poor as the one observed is very small in each of these cases and one would have to be unreasonably optimistic to see power-law behavior in any of these data sets.(p.23)

There is only one case -- the distribution of the frequencies of occurrence of words in English text -- in which the power law appears to be truly convincing, in the sense that it is an excellent fit to the data and none of the alternatives carries any weight.(p.26)

べき乗則に従うと厳密に主張できる系はほとんどない。一方、べき乗則に従うモデルはいくらでも作れる。こういう状況でべき乗則をもとに説得力のある議論ができるとは思えない、とH氏ならいいそうです。

クラスター代数?


11月19日(土)に行われた第14回数理物理・物性基礎論セミナーは「クラスター代数」というものの入門的な講義とその差分方程式への応用でした。講師は千葉大数学の井上玲氏。クラスター代数なるものを耳にするのも初めてでしたが、アブストラクトに面白そうなこと(曲面の分割に使える)が書いてあったので聴講してきました。場所はお茶大理学部。

午後3時からスタートし、最初の1時間半はクラスター代数の定義と、基本的な性質。そして差分方程式との関係。後半は数論で現れるSomos4と呼ばれる差分方程式からTシステム、Yシステムへのクラスター代数の応用。講義の最初に、クラスター代数は定義が大変という説明があり、身構えたのですが、井上氏の解説は分かりやすい。まず、辺に正の整数の重みのある矢印のついたグラフを考える。これを quiverと呼ぶ。(図の矢印の個数で重みを表す。)そして、グラフの頂点にクラスター変数をのせる。このquiver Qとクラスター変数Xi のペア(Q,Xi)に対し突然変異mutationさせて次々とクラスター変数を代数的な関係式で変形を行う。そうして得られるクラスター変数の変形されたもの全体で出来上がった代数をクラスター代数と呼ぶ。突然変異は、頂点を一個選び、そこに入る辺の矢印を逆にしたり、入る辺、出る辺の端を結ぶ新たな辺を追加といったようなもの。こうした定義を行うと無限個の生成元をもつどうしようもない代数の出来上がりになる気がしますが、突然変異の関係式をうまく選び、クラスター代数はきれいになるようにうまくできている。例えば、クラスター代数の元はローラン多項式になる(分母がきれい)とか、有限生成になるのは、quiverがディンキン図の場合(mutation同値)であるとか。

このクラスター代数を使うと、整数論で知られる問題の別証を与えられる。例えば、図に示したSomos4と呼ばれる差分方程式を考えた場合、x0からx3まで1でx4以降を計算すると、それらは有理数ではなくすべて整数であることが知られている。その証明は1980年代に与えられていたらしいのですが、クラスター代数では4頂点のquiverを考え、1,2,3,4と順番に突然変異させていくと、クラスター変数の差分方程式が得られる。それがSomos4に一致し、クラスター代数の性質から整数になることが分かる。

このクラスター代数を使い、B.KellerがYシステムという差分方程式の解の周期性を証明。それをベースに、Tシステムの周期性を証明したのが井上さんたち(IIKNS2008)。それには、クラスター代数の上の圏、クラスターカテゴリーも使う必要があるとか。恐ろしい。私には何が偉いのかよく分かりませんでしたが、クラスター代数自体は結構面白いと思いました。現在の自分の研究にはまったく関係ありませんが、いい気分転換になりました。井上さんの講義も力が抜けていて、私も見習いたいものです。

2011年11月5日土曜日

エコポッド



自宅でコーヒーを飲むときは、豆から自動で淹れてくれるパナソニックのNCーA55Pを1年以上前からつかっていて、カフェで飲むのと大差ないコーヒーを楽しむことができて重宝しています。デザインはあまり好みではないので、冷蔵庫の上の奥のあまり目につかない場所におかれた日陰の存在なのですが、毎日使っていて、豆の粉が微妙に飛び散る以外は不満はありません。パンチのきいたのを飲みたければ水を減らせばよい、といった調整も簡単。

研究室では、インスタントとか、ドリップとかいろいろ試したのですが、なかなか落ち着かない。インスタントは、豆からのコーヒーとは別物で、それはそれでいいのですが、毎回だと味気ない。ドリップは、一日2回ぐらいの頻度だと、豆をひいてからのタイムラグが長くなり、どうも劣化がきになる。で、たまたま秋田氏のWEBページに紹介されていた、UCCのエコポッドというのを試しに買ってみました。秋田氏のデザインに興味があったという理由もありますが、研究室でもコーヒーを楽しみたいのがメインです。

エコポッドは、1回分のコーヒー(など)をポッドにつめたものを、専用のマシンで淹れるシステムで、普通のコーヒーなら10回分で400円、高いもので600円でネスプレッソの半額程度。値段はいいと思います。とりあえず、写真のマシンと10回分のコーヒーのついた5000円弱のセットに、キリマンジャロやブルーマウンテンブレンドを追加して買ってみました。

1週間ほど試した結論は、インスタントよりマシ、でも薄くてパンチがなくブルックスと同じかちょい上ぐらいのレベル。淹れる量は、マニュアルで調整する機能もあるのですが、180CCのところを適当に減らしてもあまり変わらない。マックのコーヒーのようにアメリカンでいいのならいいのでしょうが、私には物足りない。ただ、淹れた瞬間は、まあまあ香りもあり楽しめるので、せっかく買ったことだししばらく使ってみます。コーヒー以外にも、緑茶、ウーロン茶、紅茶のポッドもあるみたいだし。

2011年7月29日金曜日

お台場合衆国2011


先日の火曜日にフジがやっているお台場合衆国のサウザンドサニー号を見にいってきました。朝8時に出発し、お台場についたのが10時15分前ぐらい。10時開場のようですが、平日にも関わらず結構(サンサン合衆国の)ゲートの前に人が待っていました。まずは、日本科学未来館のプラネタリウムの「Birthday」の予約をとるためにそちらにむかうと、こちらも5分前ですでに100人ぐらいの列。さすがに平日とはいえ、夏休みなのでこんなものなのでしょう。

プラネタリウムは120名のキャパで、先着順に好きなプログラムの予約をとるのですが、あと14名のところで私の家族は11時の開演の初回の予約を取ることができました。それからしらばく、通常展示を見学し、深海6500とか、スーパーカミオカンデのフォトマルとか、日本全国800か所の地震計の(30分遅れの)リアルタイムな様子、空から降ってくる宇宙船の泡箱での軌跡のリアルタイム観測などを楽しみました。説明の方もいて、結構勉強になります。

肝心のプラネタリムのほうは、地球と月、太陽系の出来る過程から始まり、最後は宇宙の銀河の分布が不均一な様子を3D(赤と青のメガネの簡単版)で見せてくれて、前半は眠かったですが、3Dをフルにつかって銀河が飛んでくる様子など楽しめました。小学生の団体も歓声をあげているし、娘も銀河を取ろうと腕を振りまわしているし。ただ、大平氏のメガスターがどんなものか見たかったのですが、3Dメガネを外したあとの最後の一瞬だけ。別のプログラムを見る必要があります。

プラネタリウムのあと、お台場合衆国に向かうと、ちょうどAKBの渡り廊下走り隊が歌っていました。サウザンドサニー号に乗るため、1500円のチケットを買い、待ち時間70分といわれ少しひるみましたが、結構行列の流れが速く40分ほどで乗ることができました。もちろん大したことはないのですが、毎朝めざましテレビを見ながら「行きたい、行きたい」といっていた娘は満足した模様。あとは、悪魔の実「ゴムゴムの実」のお菓子を買い、ゴムゴムのソフトクリームを買っておしまい。どちらも私は食べていないのですが、娘はソフトは完食しましたが、ゴムゴムの実は一個食べてそれから手を出さないので、いまいちなようです。

また、未来科学館に戻り、IBMのワトソンや子供むけの実験などを楽しんで、4時には出発。それほど混むこともなく、まあまあ楽しめた一日でした。

2011年7月3日日曜日

複雑ネットワーク入門


ネットワーク科学の教科書は、増田氏と今野先生の「複雑ネットワークの科学」がしばらくユニークソリューションであったのですが、この教科書は同じく今野先生が井出氏と書かれたもの。内容的には、5章までは、書き方が物理っぽかった増田氏とのものとは違い数学チックである他は扱う題材はほぼ同じ。ネットワークの定義から、スモールワールドネットワークのWSモデルやスケールフリーネットワークのBAモデルの紹介。ランダムネットワークのクラスター係数を厳密に計算するなどの数学的な書き方、ネットワーク科学の現象論的な側面の解説がほとんどないことを考えると、増田氏とのテキストのほうが「入門」としてはいいと言えます。

けれど、6章のしきい値モデルの解説は楽しめました。頂点に乱数をふって、2つの頂点間にリンクをはるかどうかは、その和がしきい値をこえるかどうかで決まる、というだけの単純なモデルなのですが、乱数のふりかたが指数分布なら頂点から生えているリンクの数の分布がべきになることや、ネットワークが階層構造をもつこと、また、クラスター係数、平均頂点間距離の計算など、論理展開を追うのが楽しめる本です。この章はページ数を見ても力が入っているのが分かります。

このテキストを卒論のゼミで使っているのですが、適度に演習問題もあり、学生をいじめるのには使いやすい本でした。

2011年7月1日金曜日

絶品レストラン


友里氏渾身のおすすめレストランのリスト&評価基準やその考え方の解説本。毎朝彼のブログを見ているので、たしかに見たことがあるお店ばかりですが、斜め読みしたところ、楽しめるものでした。私の場合は、ワインといっしょに楽しめるフレンチかイタリアンがいいので、その点では彼の嗜好とは近く参考になります。ここ1年に何度もチェックにチェックを重ねたという点もすばらしい。

客単価2、3万もする鮨や和食にいくことはないですが、京都にいったときに1万以下なら出してもいいかと思えるような記述の割烹のお店とか、シェイノに何かいいことがあっていくことがあれば、2万超のスペシャリテを頼まないといけないとか。前著の「グルメの嘘」のときは、ブログ読んでれば買う価値はないかと思いましたが、この本は持っていればレストランの選択時に役に立ちそうです。ブログにもありましたが、ブログを検索して調べる必要もないのは結構便利。

本の帯に、「食べログに惑わされるな」、とありますが、真理でしょう。でも、人の評価基準はそんなに確固としたものでなく「だまされても幸せなら、それもまた可」かなとも思います。

とりあえず、ちかいうちに、おすすめのレストランにいってみようと思います。

2011年6月25日土曜日

WEHIA2011-3



WEHIAの3日目。今日のお目当ては、Luxの「Modelling 'Animal Spiris' and Network Effects in Macroeconomics and Financial Markets」。内容は、エージェントベースのモデル(ABM)の評価方法、パラメータの決定方法をしっかりやって予測しましょうというもので、非常に分かりやすいものでした。ちなみに、タイトルにある「Animal Spirits」というのは、Ratioal Expectationに対する言葉で、合理性のない直観的な動物的なものという意味らしく、講演は左の図から始まりました。

心理学的な効果、ダイナミックなつながりの入ったABMの研究は74年のFollmerの「Random Economics with Interacting Agents」から始まり、83年のWerdlich&Haagの「Quantitative Sociology」、2001年のBruck and Burlof「Discrete Choice with Social Interaction」と展開してきた。

では、ABMをデータをもとにどうやってそのパラメータを決めるのか。答えは最尤法なのですが、ABMの場合条件付き確率は計算できないので、シミュレーションで計算しないといけないところが面倒。

講演では、Werdlich modelを経済のデータでパラメータを決めることを行いました。マクロなセンチメントとして景気の心理指標(ZEWIndex)を用い、工業生産と比較する。1991年から2006年までの月次データ180個を使う。Weidlich モデルはN人のエージェントがいて、楽観的な状態と悲観的な状態の2種類の状態を考え、その遷移確率が定数と状態の比率の差の指数関数となる。定数がノンゼロの場合は二つの状態をランダムに変化するだけだが、定数項が零で差の効果が大きい場合、相転移を起こし、状態間で振動する状態となる。
このモデルを解くのは難しく、マスター方程式で確率分布の時間変化とし、さらに連続近似でフォッカープランクに持っていく。それを解いた条件付き確率分布でデータに対する対数尤度を計算し、尤度が最大になるようにパラメータを決定する。

モデルには、比率の差以外に、比率の時間変化(チャーティストに対応)などの項を追加し、よりデータとフィットするようにできる。で、データと合わせると、比率に比例する項をいれると対数尤度が一気に増加し、またチャーティストの項をいれると、その次に大きな尤度の増加がみられる。また、エージェントの数Nは結構小さいとするとフィットがよくなる。

投票実験でも同じようなモデルを考えているのですが、条件付き確率の関数形を決め打ちしているので、その点はパラメータ推定が楽。また、Werdlichタイプ(Kirmanの)のモデルでは振動しても、投票モデルの場合は震度せず、一方に偏ったらそれっきりで、その変化が相転移というのとは違うのですが、方法論は同じなので大変いい勉強になりました。(誰が考えても、解析方法は同じになるのでしょうが。)

あと、この講演の前のパラレルセッションで3つほど講演をきいたのですがよくわかりません、E.Lunguは「Patterns in the occupational mobility network of the higer education graduates」で、ルーマニアの大学生の就職先の変化を追って、いろんな業種間での学生の移動を業種のネットワークと考えて解析し、その中心が「社会科学または関連する業種」であらしい。あと、1989年は出生率が2.5だったのが2004年には1.2になったらしいです。あとの二人はMySpaceとFacebookのどちらを選択するのかのエージェントモデルやコミュニケーションネットワークの生成をモデル化するのに、個人に帰属し、他人と入れ替え不可能な属性と、一般的な比較可能な属性をちゃんと考慮することが必要だと言っていたと思うのですが、理解不能でした。聴衆がスピーカー以外3,4人だった、私の話したセッションよりさびしいものでした。

これで、WEHIA2011は終了、来年はパリ、再来年はアイスランドでやるらしいです。
観光に行こうと思いましたが、ランチを終えたら午後4時で、いまはもう6時前。これからどこかに行くか、それともアンコーナを散歩するか。悩むところです。

以上。

追記:町の中心にバスで出て、港まで歩いておしまい。トライアヌスの凱旋門をしっかり見ることはできませんでしたが、遠目で見る限りイマイチ。今度来るときはフェリーでギリシャにでも行きたいものです。

WEHIA2011-2



WEHIA2011の二日目。最初の講演はA.Kirmanによる「Economic Theory in Crisis」。アリがふたつの餌場が等距離にある環境でどちらを選ぶのか、という論文が有名。アリ(の集団)は二つの餌場で振動し、それが株や為替の市場において、投資家の態度がファンダメンタリストとチャーティストの間で振動するモデルの基礎となっている。もっとも講演をきいているときは、どこかで聞いた名前だというぐらいで、なかなか思い出せなかったのですが。

内容は、市場は自己実現するけれど、それは安定なのか?1900年にバシュリエが株式市場を正規分布でモデル化したとき、博士論文の審査を行ったポアンカレは、「ガウス性の過程はまずい(flawed)」と批判した。では、効率市場仮説はどこでおかしくなったのか。市場参加者は合理的に予想を行うけれど、その予想を他の投資家が知ると精度が悪くなる。個人の予想の精度は90%、集団は50%にすぎないけれど、人はどうしても空気を読んでしまい、自分の予想を捨てる。また、そのみんなの予想の確信度が上がる。(Tichet2010,Herdy and Menz 2010,Lorenz2011)これが原因である。左の写真は、この講演を詳しく解説した彼の著書で、表紙はシュンペーターとのこと。

次のパラレルセッションはD1の市場のエージェントモデルのところを聴講。
最初はT.Heの「Contrarian, momentum and Market Stability」で、市場参加者がファンダメンタリスト、チャーティストで、チャーティストのうち、トレンドにのる人と、逆張りの人を考えたモデルを確率確率微分方程式(stochastic delay integro-differential eqn.)として解析。積分が入りるのは、過去の株価のトレンドを考量する必要があるからで、固有方程式にもっていき、安定性を解析する。すっきりとした内容で、Kirmanの話の次に興味深いものでした。デジタル投票モデルを有限記憶の場合にどう解析するかで、離散的のまま母関数をつかって地道にやる方法とは別に、確率積分微分方程式で考えるのがいいのかもしれません。

あとの二人は、なにをしゃべったかメモを見ても不明。Tramontanaは、エージェントモデルが為替市場でのStylized factsを出すのに、非線形の項は必要なく、二人のファンダメンタリスト、二人のチャーティストの参加条件をもうければいい、というのをモデルをカオスのマップにして示したみたいですが、条件そのものが強い非線形なのをどう考えているのか?

午後はG.Dosiが「Heterogeneous banks and Technical Change in an Evolutinary Model of Endogenous Growth and Fluctuations」で、為替や株価市場のミクロなStylized Factsを再現するモデルをもとに、マクロの予測を行う話。それをつかって政策効果を論じましょうというもので、例えは利息を上げた時の失業率、GDPのボラ(倒産確率に関連)を予測すると、15%から20%をこえると一気にカーブが上昇するとか、グラフを見せていました。ほんとにこんなのであたるのでしょうか?日本の消費税も20%までなら上げられそうです。(私がマクロをよく知らないので根本的に誤解している可能性も大ですが。)

そのあとは、パラレルセッションE2に池田先生の「Agent Modeling of Business Cycle and Goods Market」を聞きに行く。家富先生らが、産業や商品の市場のシンクロの様子(位相など)を市場データから明らかにしたので、それを蔵本モデルでモデル化する話。蛍も最初は明滅がシンクロしていなくても、しばらく放置すればシンクロするというのをモデル化するのと同じ。話はわかりやすいのですが、最後に、「この相転移を検証したい」と。シンクロするかどうかは、振動子の間の結合定数により、ある値をこえるとシンクロするという意味で相転移である。それはいい。けれど、マーケットの場合は、シンクロしていない状態にしておいて、条件を変えてシンクロするようには持っていけないので、検証が難しい。そこが蛍やカエルとかと異なるところ。シンクロして鳴いているカエルを石を投げてびっくりさせてシンクロを壊し、しばらく待つとまたシンクロするのを見るようにはなかなかいかない。池田先生は、リーマンショックでもなんでも、外的なショックの大きさを評価し、それがモデルでのシンクロを壊すレベルかどうかを調べるという話に持っていきたいということでしたが。

同じセッションで、A.Russoが、労働者と投資家の階級の移り変わり(金持ちになった労働者が投資家になるとか)をモデル化する「Towards a Stochastic Model with Heterogeneous Agents and Class Division」とか、労働市場において、失業率と求職の充足率に単調減少な関係が1年程度の間壊れることをモデル化する「Interpreting the Beveridge curve. An agent-based approach」がありました。

このあと、ホテルで休憩し、午後8時半からSocial Dinner。港に面したレストランで45ユーロのコース。まあ普通。日本人5人で固まってしまったので、全然国際色はありませんでしたが。

第3日は、さぼろうと思っていたのですが、T.Luxの「Modelling Animal Spirits and Network Effects in Macroeconomics and Financial Markets」だけ聞いてこようと思います。Kirmanのアリのモデルをベースに市場をモデル化した最初の人でもあるので。為替や株価、百家争鳴の状態は終了し、KirmanとLuxのモデルがベースで展開しているのでしょう。

2011年6月24日金曜日

WEHIA2011


6月23日(木)から25日(土)までの3日間、WEHIA2011という経済学、経済物理学、エージェントのシミュレーションに関連した情報工学の学際ワークショップに参加。イタリアのアンコーナというアドリア海に面した港町で行われていて、一日目が終わりました。駅前のホテルに泊まっているため、ワークショップのやっているアンコーナ大の経済学部のある町の中心部まで3,4キロあり、バスに乗っていく必要があるのですが、これが結構大変。「カブール広場」という停留所で下りる必要があるのですが、バスは一切、次の停留所の情報を教えてくれない。仕方がないので、近くに座っていたおばあさんに、「ここカブール広間ですか」とそれらしいところで聞いたら、「まだまだ。ついたら教えてあげる」と多分いっていて、実際、教えてもらい、なんとか正しい停留所での下車に成功。こう書くとスムースに事が運んでいるように見えますが、バスを間違って、まったく違うところにいったり、ワークショップの開始時間の9時半についたのはその5分前くらい。

間に合ったと思い、最初の公演が行われているホールへいくと、すでにB.Greenwaldの「Long-lived Slumps in Economies with Heterogeneous Industry Sector」が始まっている模様。手書きのトラぺでの公演は、別にいいとは思うのですが、薄すぎて式とかが全然見えないし、そもそもちゃんと解説しているようには見えない。話は全然わからなかったのですが、「日本は20年ほどスランプだ」とトークのもっともいい具体例として何度も日本が登場。農業セクターから工業セクターへの人口移動が成長の原動力で、いまはサービス産業での技術革新がそれにあたる、とかいっている感じ。

休憩後、11時からパラレルセッションが開始。私はSan MiguelがチェアセッションA1を聴講。この日、一番おもしろかったのが、E.Kampffの「The Value of Costly Information in an Agent-Based Call Auction」。8ビットの商品で、その価値が1のビットの数に対し、何ビットかの情報をあるコストで教えてもらった上で1回限りのオークションを150人のエージェントの集団でおこなう。そして、取引戦略を遺伝的アルゴリズムで進化させる。すると、まず全情報を得るエージェントとまったく情報を得ないエージェントの2種類の集団だけになる。あとは、情報のコストで全情報を得るエージェントの集団が減少し、確か25人ぐらいで落ち着く。ちまり、まったく情報を持たないエージェントの比率は6分の5.

次のJ.Vinceは「Price rigidity and Strategic uncertainty An agent-based approach」。価格が環境が変わっても(コストなど)、なかなか変化しない硬直性をもつのは、自分が変化させたときに、それでシェアを失う確率、価格競争を引き起こす確率なので、不透明な部分があり、合理的な戦略なのだ、ということを主張している感じ。

3番目は、M.San Miguelの「Update rules and interevent time distributions: Implementing human activity patterns in a model for consensus formation」。取引が行われる間隔のばらつきが非常におおきく、べき則やファットテイルであることは知られているのですが、それをVoter Modelでのスピンフリップの時間間隔で理解しようという内容。格子やネットワーク上でモデルをシミュレーションして、それでおしまい。結論は、時間間隔分布は重要だから、それをちゃんとモデル化しないとダメ。

ここからランチ休憩。中庭の一角に、ビュッフェ形式のランチ(ハム、チーズ、フライ、パン、パスタ、サラダなど)が用意さていました。参加費が350ユーロなので、こういうのがついているのでしょうが、そんなにレベルは高くない。

午後も、いろいろ聞いて、J.Stiglitzが共著に入った公演も何件かありましたがいまいちよくわからない。「容赦のない価格づけが競合他社を排除する戦略としてどうか」とかいろいろありましたが。

私は午後の最後のパラレルセッションのC2で「Information Cascade in a Sequential Voting Experiment」の話。開始時点でスピーカー3名プラス聞いている人3名(最後は7,8名)で、さびしい限り。受けたのかどうかは分かりませんが、すこし情報量が多すぎた気もします。質問で、「モデルのλは何を意味しているのか」とか、「このデータは本当に実験したものなのか、それともシミュレーションなのか」とあったので、全然分かっていないのでしょう。

このあとアペリティフを飲みながら歓談の時間(Aperoというらしい)があり、新潟大の家富先生、明治大の水野先生、東大の池田先生(正確には、入ったレストランで発見)、京大の佐藤先生のところのM1家治川さんらと夕食へ。海の幸の焼いたのと揚げたのの盛り合わせとビール、パスタを食べましたが、それほど感動はなかった。

以上で1日目はおしまい。3日目は午前中でおしまいなので、観光できそうです。マルケ州に何があるのか調べる必要あり。H氏なら、すこし北のアドリア海のビーチなのでしょうが、私は外部記憶に名所のデータを蓄積します。

2011年5月22日日曜日

神経経済学入門―不確実な状況で脳はどう意思決定するのか



デカルト以来、人の行動には機械的な反射のような確定した運動と、自由意思が関与する不確定な行動があるという二元論が信じられてきました。そして、神経科学は前者を理解することに集中し、さらにはパブロフのように自由意思の関与を否定し、すべてが「パブロフの犬」のような反射なのだという極端な意見も出されるほど。たしかに、ある機能を実現する神経系と運動系を取り出してくれば、そこには「反射」を発見できる。「反射が存在するのか?」という疑問は無意味で、反射は実在するのだ。

しかし、そうではない、神経系は直面する問題を解くために発達してきたものであり、その結果としてできた神経系を見てそこに「反射」を見出しても、神経系が「反射」を行っているのではない。「神経系が解決する問題を理解することから出発しない限り神経系を理解することは無理」、鳥の羽を理解しようと思ったら、鳥が飛ぶという機能を実現していることを念頭に、飛ぶためにメカニズムという方向から考えないと絶対理に無理なのと同じ、というビジョンを打ち出したのがデビッド・マー。

では、神経系はどのような問題を解いているのか。それは、さまざまな選択肢のリターンとその確率の積から期待リターンを計算し、それを最大にする選択肢を採用するための計算を行うというもの。実際に神経の発火頻度はリターンの大きさや確率の大きさを表現しているし、また期待リターンが最大のものを選択している。もし、その結果として確率的に、つまり「サイコロ」を振って他者からは予測できないように行動するのがベストな場合、ハトであっても確率的に行動する。それは他者から「カモ」にされないように進化してきた結果であり、ヒトの場合にも正しい。(ダンゴムシが「心」を持つのも、持たないと「アリ」にカモにされるからなのでしょう。)

すると、二元論で考えてきた機械的な反射と自由意思が関与し、人が「自分が自分で決断した」行動の区別はなく、単に進化の結果、つまりリターン(包括的適応度)を最大化するように進化した結果、予測が簡単な場合は「反射」に見える行動を行う。予測が難しく確率やリターンの評価が難しい場合、他者の行動がリターンに絡んできたりして予測が難しい場合、または他者にカモられないために確率的に行動する必要がある場合に、ヒトは確率的に行動する。つまり、一元論。面白いのは、期待リターンが等しい場合、迷った結果ヒトは選択するのですが、その時ヒトは「自分の意思で決定した」と感じるらしいこと。

非常に面白い本でした。脳の動作原理がここまで解明されていたとは。ここまで脳の単体での動作原理が解明されてしまうと、藤井氏が「つながる脳」「ソーシャルブレインズ入門」で主張しているように、「つながった脳」の研究というのが新たなフロンティアというのは分かります。しかし、この本では、2頭のサルや二人のヒトでの行動原理についての解明もゲーム理論で期待効用を計算し、大体の説明がついている。それをデータの取得を増やして超えられるとは思えず、藤井氏の研究は難しいだろうなと思いました。

では、どういう方向で研究を行っていくのか?共同研究者のH氏は「相転移」が物理からのキラーコンセプトという考えのようで、私も「相転移」だとインパクトもあるし物理の雑誌に論文を出しやすいので賛成ではあるのですが、「相転移」が単に「情報カスケード」止まりだと早晩行き詰る。ヒトがどのように情報の流れのなかで適応していくのかは深いテーマですが、次の次をどうするか?

明月院



天気予報ではそうでもなかったのですが、朝起きたら天気がよかったので鎌倉に行ってきました。さだまさしの「縁切寺」のコース「源氏山から北鎌倉へ」を念頭に、その逆の北鎌倉から入り、時宗の円覚寺、あじさいの明月院、そして鶴岡八幡宮へ(本当は縁切り寺、明月院のあと源氏山に登ろうと思ったのですが、疲れたのでバスで八幡宮へ)。日曜日でしたが、それほど人も多くなく、初夏のみずみずしい緑の中を散策することができました。次は梅雨に入る前に江の島に遊びに行こうと思います。

2011年5月19日木曜日

Star-Triangle relation in Statistical Physics

R.J.Baxter。統計物理の研究者ならその名を知らない人はいないぐらいの有名人。そのBaxterのセミナーが東大駒場であると聞いたので聴講してきました。これが数理物理・物性基礎論セミナーの第10回目

午後4時から5時半までの予定で、アブストラクト通り、前半は Star-Triangle 関係式に関するレビュー。ここまでは普通(三角格子と蜂の巣格子の間でStar-Triangle 関係式から長方格子上の模型との関係を導くとかは知りませんでしたが)。後半は、その関係式のもっとも一般的な解を構成したBazahnovらの仕事(1006.0153)を紹介、6パラメータでカイラルポッツ模型や柏原・三輪模型も含むものである。そして最後にその一般的な解が物理的には無意味であることを示したAdlerらの仕事(1011.3527)を紹介し、泣き顔のマンガのスライドを見せて、which is sad. does not give new physical regular modelでおしまい。

私が嫌いな理論物理の分野のNo1がソリトンでNo2が可解模型だったのですが、その順位が入れ替わりそうです。数学としてはいいのでしょうが、面白い夢のあるトークを期待しただけに残念です。可解模型は物理としては終わっているのでしょう。新しい分野を探せというメッセージと受け取るべき、と思いました。

追記:もし、T木君が見てくれたなら、ぜひ反論をききたいです。また学会で。

2011年4月18日月曜日

予想脳



「社会」「ネットワーク」「予想」、いわゆる「集団知」「集合知」といったものを物理として研究するためのネタがないかと探していたときに「つながる脳」という本にぶつかり、その流れで見つけた本です。

著者の主張は、脳の本質的な機能は、絶えず流入する情報をもとに、未来予想すること。現実の世界を抽象化した「テンプレート」という主観的な空間の中に、どのような変化をどのぐらいの確率で行うのかといった情報のついた「オブジェクト」を配置して未来を予想する。テンプレートの中のオブジェクトの数は少ないので、人工知能で問題だったフレーム問題、複雑な環境下であやゆる可能性を絶えず検索してベストな方法を計算することは計算量が爆発して不可能、を回避出来る。また、脳は予想と現実の誤差を自動で計算し、それを「フレーム」という視点で認識してオブジェクトに関する学習を行い、予想精度を高める。

脳を理解するには、社会が多数の脳が結合したネットワークであり、脳は社会での予測を行うよう進化してきた、という視点が重要である。脳単体での研究には限界がる。

また、表紙には甘利先生の「脳は情報を予測する装置として発展した。こう見ることで脳の秘密が解き明かされていく」。

脳を理解するには、神経細胞のつながりや時間変化を丹念におうだけでは限界がある。丁度、鳥の羽と同じように。その意味で、書いていることは納得できるのですが、イマイチ消化不良。「つながる脳」と「ソーシャルブレインズ入門」を読んでみようと思います。

2011年4月11日月曜日

群れろ!



人の集団知、集合知や情報カスケードといったハーディング(群れ化)の研究のヒントになるかと思い、読んでみました。カメムシがなぜ群れるのか、蝶ならどうか、蛍はどうか、アリはどうなのか、といった感じで、さまざまな昆虫が群れる理由が丁寧に解説されています。最後のセクション「つながる群れ」では、アリがフェロモンをうまく使って「ボトムアップ」で自己組織化された協調行動をとる群知能のこともすこし出てくるのですが、私的にはここらあたりをもっといつこんだ解説を読みたかったです。もっとも、それは情報工学の問題であって、分野が違うもかもしれませんが。

宮古島や奄美大島では、シロオビアゲハがベイツ型擬態という、毒をもったベニモンアゲハと同じ模様を持つのに数年しかかからなかった(ただし、模様だけで自分は毒をもたない)とか、タガメはオスが子守をするけれど、別のメスは、そのオスを自分のものにするためそのオスの子供を殺す「子殺し」を行うとか、雑学的には面白い本なので、昆虫が群れる理由を知るにはいいと思います。

2011年3月27日日曜日

ダンゴムシに心はあるのか



筆者の目標は「心や知能の遍在性」つまり、どんなものにも「心」や「知性」があることを示すことだそうです。でも、「心」とは一体何なのか。この本のユニークなとこは、「心」の定義です。筆者は、我々が用いる「心」という言葉とも矛盾せず、それでいて、観測が可能な定義をあたえました。それは、「対象の心とは、ある行動を行うときに、それ以外の余計な行動の発現を自律的に抑え込むものである」というもの。これだけだと、観測できないように思えますが、自律的に抑え込んでいるのが、未知の状況下では、そのタガが外れることがあり、その時に「心」が見える。ある意味「心」の操作論的な定義とも言えます。

この定義に基づいて、ダンゴムシに「心」が存在するのかどうかを実験で明かにします。この定義を受け入れるなら、確かにダンゴムシに「心」は存在するようです。最初の実験は円形状の運動場のまわりに水で堀を作ったところにダンゴムシを置くというもの。ダンゴムシは触覚しかなくて目が見えず、また水が怖いので、直進して堀に近づくと、方向転換し、あとは堀に沿って運動する。しかし、いつまでいっても怖い水から逃げられないという「未知の状況」に直面する。このとき、21匹中3匹が堀に明らかに積極的に突っ込んでいった。「障害物=堀に沿って動け」という本能(そのほうが障害物を避けられる)と、「水は怖い」という本能が矛盾し、そこでダンゴムシの「心」は普段は押さえつけている「水に突っ込む」を選択する。「心」が見えた瞬間です。

別の実験では、円形の運動場を円環状にし、円環の中央部分に障害物を並べる。今度は堀には突っ込まずに、障害物に乗り上げ、さらには障害物伝いに移動する個体も現れた。この場合、ダンゴムシの「心」は、「水は怖い」「堀に沿って動け」の矛盾という「未知の状況」に直面しているのは同じなのですが「水に突っ込む」ではなく、「障害物に乗り上げ」を選んだわけです。(ちなみに、この状況で堀の代わりに登れない壁にした場合、壁と障害物の間の狭い部分をひたすら移動するだけ。)また、障害物に乗り上がる頻度がランダムで、単純な学習でもない、とも書かれています。

問題は、筆者の「心」の定義を受け入れるかどうか。私の疑問は、対象が本能や反射(またはそれを動かすプログラム)と矛盾する状況下で何か決定を下すとき、可能な選択肢のなかから適当なものを確率法則で選んだら、それを「心」と言えるのか、という点です。ロボットのチャットプログラムがあって、いろんなパターンで言葉を返してくれるけれど、プログラムにない言葉がきたら、ランダムに言葉を返すとしたら、そのチャットプログラムは「心」があると言えるのか?

疑問はいろいろありますが、おもしろい本でおすすめです。書き方に科研費の書類を詳しくしました的なノリは感じるのですが。あと、筆者の言う「心の科学としての動物行動学」のとらえ方は「実験経済学」と本質的に同じです。動物の場合は餌を食べさせるには絶食する、人を実験に協力させようと思ったら金を払う(金を払うから実験経済学は心理学とは異なる)という点で。

2011年3月25日金曜日

トリプルA 小説格付け会社



数年前にCDOの研究をやっていたこともあり、格付け会社についての興味もあったので読んでみました。黒木氏の本は、これが2冊目。1冊目に読んだ「獅子のごとく」はイマイチだったのですが、今回のは楽しめる作品でした。

「格付けとは、科学的なものでもなければ、公明正大なものでもありません。これはあくまで格付け機関の意見、つまりアナリストの意見でしかないのです。」ムーディーズ・ジャパン代表(1997年6月)

格付け会社が日本にどのように入り、「格付けは表現の自由に基づいた意見表明にすぎない」といいながら、いつしか債券の発行体におもねった依頼格付けで儲けるようになる。ムーディーズといえども現在は株式会社(2000年上場)であり、株主の利益を考えるなら儲けることを優先しないといけない。つまり、発行体の詳細な調査、解析の上で投資家に正確な情報を流すのではなく、発行体が満足する格付けが出るように努力する。格付け会社は市場の「中立な審判」でなく、「ヤンキースのヘルメットを被って資本市場で自らバットを振るプレーヤー」になってしまった。その結果、そもそもどうデフォルトが起こり、どの程度の損失が出るかよくわからないCDOなどの債権に「トリプルA」などの格付けを出すようになる。それが2008年のリーマンショックにつながっていく。

CDOの研究をやっていても、どうモデル化してよいのかまったく指針がないのが大変でした。過去のデータから、それを再現するような確率モデルを使うというのが本来だと思うのですが、それがない。仕方がないので、CDOの市場価格から、市場が損失をどのように見積もっているのかを逆算し、という研究を最後に、この分野の研究から離れたのですが、市場価格そのものが、どれほど信用できるのかがそもそも分からない。価格は大体において投資家の群れたい心理(=みんなと同じ値段をつける)の要素がある(競馬市場はその要素が比較的少ないので、集団知の研究に適していると考え、研究しているのですが)。CDOのあるトランシェのプレミアムは8bps(0.08%)だったとしても、それを額面どおりには受け取れないわけです。でも、それを信じて確率を逆算するしか、信じるものがなかった。苦しい研究でした。

この本の最後は日本の破綻に関する場面で閉められています。格付け会社マーシャルズの日本代表は、ここ5年で国債の借り換えができなくなり、さらに5年は海外で国債をさばくけれど、それも出来なくなって最後は韓国のようにIMFが介入する。「あれの意味はですね、日本人は能天気だから壁に激突するまで問題を意識しようとしない。しかしいったん激突して焼け野原になれば、皆真剣になって力をあわせて努力できる民族である」「この東京は、もう一度、焼け野原を経験することになるんでしょう」

まあ、そうなるのでしょうけれど、難しいのは10年なのか15年なのか、それとも5年なのか、誰にも分からないことです。私はどうせなら早めに破綻してほしいのですが。

あと、この本は最初「東スポ」に連載された小説だと、格付会社S&D!の方に教えてもらったのですが、誰が読んだのか。東スポの読者は金融マン?

2011年3月21日月曜日

作りながら学ぶRuby入門



昨年行った投票実験は、対面方式で、一人一人クイズを出題してそれに答えてもらい、次に過去の回答者の回答情報を部分的に開示して、回答してもらうというものでした。これが結構大変で、過去の回答者の情報を出すためには、前の回答者が完全に回答を終えている必要がある。1人2時間(110問)の回答時間だったので、31人のデータをとるには、その31倍の62時間かかるわけです。そこで、2時間の回答時間を半分に割って、1時間遅れで回答するように工夫はして、それでも30時間近くかかってしまった。人件費ももったいないですが(時給1000円)、はっきりいって「頭が悪い」実験。

そこで、この投票実験を多人数が同時にWEBブラウザでサーバーにアクセスで可能なシステムの開発をしたい、と考えて、一番楽そうなRubyによる開発のために、この本「作りながら学ぶRuby入門」を勉強してみました。


結論からいうと、「この本はおもしろい」。画像に示した、WEBブラウザとサーバーを使った蔵書管理プログラムを目標に、それに必要ない部分は見事にバッサリ切って進んでいくのは、あとあと困るかもしれませんが、ジェットコースターのようで楽しい。

最初に読む本ではなく、Rubyを少しかじって、何かおもしろそうなものを作ってみたいと思ったときに、非常によい動機付けを与えてくれる気がします。

今年の卒論のパソコン実習は、「たのしいRuby」から入って、この本をやったあとで、天気予報のデータベースでも作らせてみようかと考えています。卒業研究はそれから。私はこの本の知識をもとに投票システムを作って、「競馬」の実験をやりたいと思っています。オッズは競馬ファンの集団知なのか、それとも競馬ファンをハード(群れ)化するだけなのか。

2011年3月18日金曜日

Ubuntu10.10でsqlite3-rubyのインストール




「作りながら学ぶRUBY入門」でRubyからデータベースSQLite3を使うためのライブラリSQLite3-rubyのインストールに手間取ったので、その備忘録。

単に、
sudo apt-get install sqlite3
sudo apt-get install gems
sudo apt-get install rubygems1.8
sudo gem install sqlite3-ruby

とすると、図のようなエラーを出してインストールしてくれない。エラーメッセージを読むと、コンパイルで失敗しているみたいなので、手当たり次第にライブラリをいれる。

sudo apt-get install libsqlite3-dev
をやってもダメ。
sudo apt-get install libsqlite3-ruby
をやってもダメで、次に
sudo apt-get install ruby1.8-dev
を試すと、
sudo gem install sqlite3-ruby
がうまくパスしました。

あとは、
sudo gem install dbi
sudo gem install dbd-sqlite3
で、第5章の環境が構築できる。

めでたし、めでたし。しかし、LinuxをSlackwareのころから使っているけれど、進歩がない。トラブルが起こると、WEBで手当たり次第に検索するだけ。

同じトラブルに見舞われるであろう、I君へ記録を残しておきます。

2011年2月24日木曜日

卒論発表終了

昨日平成22年度の卒論発表が終了。今年のメンバーは5名で、自宅に引きこもるのはいるは、「朝10時までに来い」といっても、来るのは1,2名とかでいろいろでしたが、10月の投票実験とその解析で4名、残り1名は昨年の競馬予想の続きで、今年の発表のラインアップを組むことができました。

1:熊谷「美人投票と情報カスケード」

2:石澤「投票実験と情報カスケード」

3:辻「情報カスケードと相転移」

4:神田「投票モデルの統計物理」

5:入江「競馬予想と集団知」(本当は「最強の競馬予想」だったが、他の先生からのクレームでタイトルが変更。)

以上が、今年の発表のタイトル。プレゼンは、一番の熊谷君のが一番うまかったか、という印象です。他の方々も、まあまあだったと思います。ご苦労様でした。新しい環境で活躍されることを期待します。

2011年2月10日木曜日

つながり



誰がホモ・エコノミクスを殺したのか?そもそもホモ・エコノミクスは存在したのか?著者の答えは、非工業化社会の原住民に非常に合理的に行動する人々がいるというもの。アマゾン川流域のマチゲンガ族、タンザニアのハザ族、エクアドルのケチュア族など。それらに共通するのが社会性の欠如。部外者と遭遇しない、市場での取引を行わない部族ほど経済学者が考える「人間は私利私欲に基づく種であり、最小限のコストで最大限の個人的利益を得ようとする」ホモ・エコノミクスに近い行動をする。

一方、人類はこのホモ・エコノミクスの状態から進化し、ホモ・ディクティアヌスになったと著者達は考える。ラテン語のdicty=「網・ネット」とhomo=「人間」からの造語で、「人間の動機を純粋な利己主義から切り離」し、「私たちは他人とつながっているゆえに、また他人を思いやるように進化してきたがゆえに、行動を選択するにあたって他人の幸せを考慮」し、その結果自分の欲求に「周囲の人々の欲求を」を含め、「自分とつながりのある他人の欲するものを欲する」。

また、人の脳の大きさから、人は150人程度の人と「つながる」ことができる。この150をダンバー数という。ここでいう「つながる」というのは、「相手のことをよく知っている」関係のこと。150人とつながりを維持するためには、「毛づくろい」では自分の時間の42%必要となるので、人は「言葉」を発明した。「言葉」なら、「毛づくろい」と違って、1対1である必要はなく、一対多でOKだし、効率がいい。ダンバーの試算では「毛づくろい」より言葉は2.8倍効率的で、レストランの予約の人数を調べてみても、グループの人数の平均値は3.8だった。

人はなぜ投票するのか。自分の一票で選挙の結果が変わるわけでもないのに。筆者たちは「3次のルール」という自分の行動が友人の友人の友人にまで影響することを発見。すると、ひとり10人の友人がいれば、投票行動は、10人の10人の10人先の計1000人に影響し、ひとり1000票の価値を持つことになる。すると、選挙結果に影響がないとは言えず、投票行動は「合理的」となる。その他、「肥満は伝染するのか?別にいっしょにマックにいくわけでもないのに」などなど、取り上げるテーマも興味を引くものばかり。

おすすめです。

2011年2月8日火曜日

学会誌から

昨日、物理学会誌が届いたのを自炊するために分解しながら、パラパラと眺めていたら、金子先生の記事を見つけました。それは、1979年の東大物理の卒業文集に寄稿された久保亮吾先生の「基礎と応用」という文章の再録に関するもの。

内容は、日本に10年近く滞在したフランスの研究者D氏と久保先生の会話から始まり、D氏が「日本は応用科学には力をいれるが、基礎科学への努力は甚だ乏しい」という日本科学への短評から始まります。「フランスでは技術者でさえ、最も基礎的なことをやりたがる」「誰でも、できるならカルノーの原理のようなことをやりたいのだ」と。

それに対し、すこし「意外」という感想と日仏の比較のあと「基礎科学と応用科学の意味とその関係」についての話になります。久保先生の文章では極論として、真理とは役に立つもの(By 高橋秀俊先生)で、「役に立たないものは真理ではない。」「真理を求めるのが科学なら、応用とか基礎の区別は意味がない」となる。「その上に何かあるものを構築され得るだけの基礎を探求する、というものだけを基礎研究と呼ぶとすれば、それは実用を目的としない研究というのとはちがった意味である。」また、「大事なことは、役に立つ基礎を一つ新しく築くことである。」と。

最後に、話の落ちがお説教になって申し訳ないとしながら、「物理学科を卒業する諸君の仕事は本当の基礎を営々と築く活動であると思う。何も物理の分野に限ったことではない。物理の精神は本来、そういう基礎の学問であり、最も応用がきくものである。それが教育できたとは私も思っていない。むしろ、物理をやろうと思ったその気持ちの中にそれがあったはずである。」(1979.2.26)

北里物理の学科長は十河先生。久保先生の最後の弟子として何を語るのでしょう。

あと、学会誌に最後の会員の声で、吉岡先生が「グラフェンでは困りませんか?」という記事を書かれていました。grapheneは「グラフィーン」という表記のほうが発音に近い。グラフェンだと、日本人はグラにアクセントを置きがちで、外人には「グラヘン」と聞こえてしまう。今変えとかないと、Reynolds(レイノルズ─>レナルズ、レノルズ)数、acoustic(アコースティック─>アクースティック)やlaundry(ランドリー─>ラーンドリー、ローンドリー)みたいな、ローマ字読みのカタカナをそのまま発音することになってしまうと。今年、修士論文の副査を担当するのですが、そのタイトルは「グラフェンの物性の理論的研究」。修正させたほうがいいのでしょうか。ちなみに、主査は十河先生。

2011年1月29日土曜日

量子カオスの条件



半年ぶりに、数理物理・物性基礎論セミナーに出席。今回で7回目だそうですが、私は1回目の笹本氏のとき以来の2回目。テーマは、カオスの量子古典対応問題。講師は齊藤 圭司 氏。

カオスはもともと、系の時間発展が初期値に鋭敏に依存することを意味する言葉であり、有名なのがバタフライ効果で、ニューヨークでの蝶のハバタキがフロリダのハリケーンを巻き起こすというもので、あくまでニュートン方程式のような古典的な系に関する概念。では、古典的なマクロな系がカオス的なら、対応する量子系はどのような特徴をもつのか。それに対する答えが「エネルギー準位の統計がランダム行列のものと一致」ということ。

もっとも、答えといっても証明があるわけではなく、Gutzwiller(1971)からBerry(1985)までの研究で、エネルギー準位の2点関数のフーリエ変換の一次の項の一致のみが示されただけでした。図は、ランダム行列でのエネルギー準位の2点関数のフーリエ変換。τに関する一次の項の一致を示したのがBerry(1985)。それがここ10年の間にすべての次数での一致が示され、そのテクニックを使うと、ランダム行列で計算できない物理量が、半古典論にもとづく計算で可能となるとか。

セミナーでは、Berryまでの流れを前半の2時間半で解説し、細かな計算はともかく非常に分かりやすいものでした。一般的な古典系がカオスであるとして、古典軌道の概念を使いながら(つまり半古典論で)エネルギー準位の分布などの計算を行っていく。ひたすらガウス近似でおおらかに計算していくところは、昔風の理論物理そのもの。エネルギー準位の分布は古典軌道の和で書け、相関は経路の積の和になる。そのうち残るものが同じ経路の間だとして計算したのがBerryで、図の一次の項のτと2τを求めた。二次以降の項は、経路の重なりを考えて、組合せ論を展開する必要がある。

後半の1時間は、その高次の項の計算に用いられたSieber&Richer図と相関関数の計算(2001から2005)の解説。肝心の図の内容は理解できませんでしたが、雰囲気や、この手法がランダム行列の展開公式やアンダーソン局在の計算から思いつかれたものであるとか、いろいろ興味深いものでした。

自分で研究するわけではないですが、大変勉強になりました。ただ、内容が内容だけに学生さんむけというよりは、ほとんどプロ向けの勉強会になってしまっている。また、参加メンバーも、オーガナイザー周辺の人々だし。なかなか難しいのでしょうね。

2011年1月22日土曜日

キャプテンバギーの懸賞金はいくらか?



ワンピースで活躍するキャラクターの一人に「道化のバギー」ことキャプテン・バギーがいます。昨年行った投票実験のクイズの問題に、彼の懸賞金に関するものがありました。

問題:漫画「ワンピース」に登場する、バギー海賊団船長「道化のバギー」の懸賞金はいくら?(2010年9月1日現在)
            A.1300万ベリー    
            B.1500万ベリー

この問題に31人の学生さんに答えてもらったところ、正解したのは18人で正答率は約60%。もし、誰も正解を知らないなら正解する人の数は15,6人で、ゆらぎは3人程度なので、ゆらぎの範囲内ともいえるのですが、その点は置いておいて(31人というのがネック)、次のように考えるとします。答えを知っている人は20%で残りの80%はヤマカンで答えていると。すると、ヤマカンであたる確率は50%なので、答えを知っている20%と答えを知らない80%のうちの半分が正解して60%という正答率が出ることになります。

では、この二択のクイズを次のように行うとします。

(1)一人一人が解答
(2)前回までの解答結果をAに何票、Bに何票と教える。たとえば3番目の人には過去2人の投票結果を票数で教える

このとき、投票結果はどうなるでしょうか?そのときの投票の様子を示したのが次の図です。



毎回の投票の様子を折れ線の延びであらわしています。正しい選択肢に投票するとx軸に1ステップ、間違った選択肢に投票すると、y軸に1ステップ進みます。原点から出ている対角線は、ちょうど二つの選択肢の得票数がイーブンの状況を示し、もうひとつの対角線は31回投票後に到達しうる状態(x+y=31)を表しています。最初に伸びていく折れ線は前回までの投票結果を教えない状況での投票の様子を示しています。二つの選択肢の間でゆらいでいる様子がわかると思います。最初の二人が間違った選択肢を選んでいることに注意してください。

次に伸びていく折れ線は、(2)に書いたように、前回までの投票結果を教えた場合です。最初の一人は、参考にできる投票結果がないので、投票結果を教えない場合と同じように間違ったほうに投票します。二人目は、参照しない場合でも間違っていたのですが、教えた場合、最初の人の間違った答えを参照したので、おそらくより自信を深めて間違った選択肢を選びます。3人目の人は、参照しない場合は正しい選択肢を選んでいたのですが、今の場合は二人目までが間違った選択肢を選んでいるので、それに影響されて間違った選択を行う。この間違いの伝播が16人目まで続き、ひたすらy軸のほうに折れ線が進んでいきます。17人目に、やっと正解を知っている人が現れて、折れ線がx軸に1ステップ進むのですが、その時点で正解と不正解の得票数は1対16。それ以降の人々は、正解を知らなかったみたいで、全員が間違った選択肢を選び続けるようになります。(この結果を見ると、正解を知っていたのでは31人中1人で、残り30人は知らなかったことになり、20%80%という最初の評価にはすこし誤差があることがわかりますが。)

実験では、正解率が50%より高く、70%以下のクイズが全部で78問ありました。平均の正答率は60%で、この数字から正解を知っている人は20%、正解を知らない人は80%ということがわかります。正答率は50%より高いので、何も知らないで投票し、多数決で正解を推定すると100%正しい解答を選べたことになります。では、前回までに投票した人の投票結果を見せて投票させると、どうなるのか?そのときの正解率の分布を以前お見せしました。20%のところに小さなピーク、100%のところに大きなピークのある緑のヒストグラムです。では、このヒストグラムで正答率が50%未満のもの、つまり多数決を使うと間違った選択肢を選ぶことになるものがどれぐらあったかというと、16問。つまり2割強の比率で情報カスケードにより、選択を誤るわけです。



では、正解が知らない人がp%存在する(正解を知っているのは1-p%)とき、多数決で選択肢を選ぶと間違う確率はいくらなのでしょうか?論文の結果を示したのが、左の図です。αで間違う確率、つまり誤った選択肢の得票率が50%を超えてしまう確率を示しています。x軸は、無知な人々の比率。pが50%以下なら、その確率はセロなのですが、50%を越えるとゼロでなくなり、100%では確率50%で多数決が誤ることを教えてくれます。100%の場合は正解を知っている人が誰もいないので、誤る確率が50%になることは自明なのですが、無知な人が50%を超えると多数決で間違う確率が増加する様子は興味深いものです。特に50%での増加の様子は、情報カスケードが2次の相転移(確率の変化は連続で、その微分が不連続)であることを教えてくれます。

この式に、無知な人の比率が80%という値を代入します。すると、αは3分の1となり、3回に1回多数決が間違うことになります。実験では、78問中18問の2割強だったので、若干(?)少ない値となっていますが、その差が、投票人数が少ないこと(理論の結果は無限の人が投票する場合)からくるのは、サンプル数(78問)が少ないからなのか。それとも無知な人々の比率の推定がラフすぎるのか。私は、誤差の原因は論文のモデルがシンプルすぎだからと考えていますが、この実験結果の示唆する情報カスケード転移の本質を捉えていると考えています。

2011年1月20日木曜日

ニューラルネットとソーシャルネット2



「ニューラルネットとソーシャルネット」の続き。

今回の研究で一番驚いたというか、直感に反した結果というのは、参照する人数を増やすと正答率が下がるというものでした。考えている状況は、一人一人順番に投票し、そのうち比率1ーpの人は確率qで正しい投票を行い、比率pの人は無知で二択のうちのどちらが正しいか分からないというものです。このままだと全体の正答率は(1-p)q+0.5pとなります。無知な人々は、自分より前に投票した人の投票結果を参考に、その多数決の教えるほうに投票するとします。問題は、何人の意見を参考に投票するのが自分の正答率をもっとも上げることができるかというものです。直感的には、過去のすべての投票結果を見て、それを参考に投票するのがもっともよさそうです。モデルでは、多数決に従うとしているので、自分の順番が100番なら過去99人の投票結果のうち、66人が選択肢Aで残り33人が選択肢Bなら、選択肢Aを選ぶ。自分の順番が1000番なら、過去999人の多数決に従う。こうすれば、過去の情報をすべて取り入れることが可能になり、無知な人々の影響も弱まって、正答率も最大になるだろう。

図は、無知な人が80%存在する場合に、10000人の人が投票したときの全体の正答率をプロットしたものです。y軸はその正答率π。x軸は参照した人数rです。参照人数が1人の場合、無知な人は自分の直前に投票した人の結果を参照し投票する、というかんじです。図を見ると、正答率はある参照人数のところで最大になっていることが分かります。qが100%の場合は一人参照、それ以外の場合は5人から10人ぐらいを参照するのが正答率が最大で、参照人数をそれ以上に増やすと正答率は減少します。

何人を参照して投票するのがベストなのかは、全体の投票人数(何番目に投票するのか)や無知な人の比率p、正しい人の正答率qを変えると変化するので、一概には言えないのですが、pが80%以上の場合は5人から10人を参照するのがよく、pが低い場合は何人参照しても正答率はほとんど変化しないのですが、参照人数が多いほうが正答率は高い。次の図は、pをx軸に、正答率をy軸にとり、参照人数を変えたときのpと正答率の関係(1万人投票でq=0.6の場合)をプロットしたものです。pが大きい場合は参照人数が少ないほうがよく、小さい場合は多数の人の意見に従ったほうがいいことが分かります。また、参照人数が無限大の場合、無知な人々の比率が50%をこえているならば、どの参照人数の場合よりも正答率が低いこともわかります。




例えば、食べログやアスクUなどのレストランでレビュー件数が1000件の場合、1000件での多数決よりは直近10件での多数決のほうがいいということなのでしょう。情報の鮮度を考えると、数年前のレビューより、この2、3カ月のレビューを信じたほうがいいという、何かあたり前の結論になります。参照人数を多くすると正答率が下がるというのは別に直感に反するわけではなく、常識なのかもしれません。

もちろん、これはあくまで例え話なので、問題の本質とは関係ありません。情報カスケードで悪い状態に捕まったとき、参照人数がすくないならば、正しい人が状況をひっくり返せるけれど、参照人数が多い場合はそれができない、ということなのでしょう。

2011年1月19日水曜日

ニューラルネットとソーシャルネット


人の脳は神経細胞(ニューロン)がネットワークを組んで情報処理を行っている。1943年にマッカロ&ピッツは、ニューロンが興奮する(y=1)かしない(y=0)かをニューロンの膜電位xで記述するモデルを提案し、脳の情報処理の仕組みの解明が始まりました。ニューロンは、膜電位の変化に対応して興奮できる頻度に限界があり、大体1秒に10回といわれています。脳には140億個のニューロンがあるといっても、それらが並列に動作するとして1秒に処理できる回数は140億かける10回の1400億回。0.14TFLOPS(TFLOPS=テラフロップスは1秒に1兆回という単位)となります。一方、最近のスパコンはTFLOPSではなく、PFLOPS(ぺタフロップス)という単位で計算速度を示していて、それは1秒に1000兆回と、TFLOPSの1000倍。つまり、人の脳の計算速度はスパコンの1000分の1以下ということになります。ある意味で、脳は非常にのろい計算機なわけです。

マッカロとピットのモデルは、他のニューロンから入ってきた膜電位の変化を足し合わせて、それがある閾値βを超えると、ニューロンが興奮(発火)するというもの(左図参照)。つまり、各ニューロンで、他のニューロンからの入力の多数決をとり、自分が興奮するかどうかを決定する。そして、自分の状態の変化を他のニューロンに伝達する。そういうのを繰り返しているのがニューラルネットワークであるというモデルです。ニューロン間の信号の伝達は、シナプスと呼ばれる部分で化学物質を媒介とするためにどうしてものろくなってしまうわけです。

一方、のろいといえば、人のネットワークの情報処理も同じかもしれません。世界人口は2010年10月で69億だそうで、ほぼニューロンの数と同じぐらい。そして、人が社会において合意を行う方法として、民主主義の国家では多数決というルールを採用しています。つまり、人のネットワーク(ソーシャルネットワーク)とニューロンのネットワークは基本的に同じ仕組みで情報処理を行っている。人の場合は選挙や会議での多数決により、ニューロンの場合は膜電位の多数決により。選挙や多数決はそれほど迅速に行えないので、のろいのは脳と同じです。

今回、共同研究者のH氏が行った研究「Digital herders and phase transition in a voting model」は、マッカロとピッツのモデルで人が投票を行うとするならば、何が起こるのかというものでした。ただ、設定を極力単純化するために、人(ニューロン)は1度に1人しか投票しない。また、ニューロンの興奮するかしないかに対応して、賛成&反対のような二択への投票とする。賛成が正しいのか、反対が正しいのかは、難しい問題です。そこで、人は確率q正しい選択を行うとし、qは50%よりは大きいとします。これだけなら、単に確率qで正しい選択肢へ投票を行う問題なのですが、これに競馬の投票でも扱った無知な投票者も考える。彼らは無知なので、確率50%で二つの選択肢に投票するしかないのですが、彼らも正しい選択をする動機はあるので、なんとかしようとする。そこで、その投票者が投票する時点以前の投票結果を教えるものとします。このとき、無知な投票者は、その投票結果を参考にして投票するのが合理的(自分は無知なので)なのですが、前回のモデルとは異なり多数決を使うことにする。つまり、過去3人投票しているとして、2人が賛成1人が反対なら自分は賛成とするわけです。

こうした無知な投票者が比率pで存在するとすると何が起きるのか?pが小さい場合は、無知な投票者の正答率が上昇します。しかし、pがある値を超えると、正答率が低下をはじめ、pが100%での正答率50%まで単調に減少します。では、このある値を境にして何が起こっているのかというと、無知な人が増えると、たまたま過去の多数決が間違った場合、無知な人はそれを信じて間違った選択をするという悪いループに落ち込んでしまうのです。そういう状況下でも、正しい知識をもった人は確率qでがんばって投票しているのですが、いかせん無知な人が多くなっていて、彼らはヤミクモに多数決に従ってしまうために、選択肢を選びなおすことはできません。情報カスケードといわれる一度はまり込んだアリ地獄から抜け出せない状態です。



左の図は投票実験のデータです。x軸に無知な投票者の比率、y軸には投票者全体での正答率をプロットしています。赤い実線は理論モデルの厳密な計算結果(投票人数∞の場合)、緑の線は実験に合わせ31人投票する場合の結果を数値計算したもの。ピンクの点線は投票結果を参照しない場合です。青の+が実験データをプロットしたもの。実験の設定では、クイズの答えを知っている人は、正解に投票するので上記のq=1の場合に対応します。クイズの答えを知らない無知な投票者の比率が50%以下の場合、前回までに投票した人の投票結果を参考にすると正答率が90%近くになっています。しかし、無知な人の比率が50%を超えると、正答率は一気に下がり、誰も答えを知らない場合の50%を目指して急降下する。何も参照しない場合、無知な人々は50%の正答率しか持たないので、参照した場合は正答率が上昇していることがわかります。


この結果をみていると、他人の情報をあてにして自分の意思決定を行うことは、個人的には正答率を上げることにはつながるのでメリットはあるのですが、社会的にはデメリットしかないことがわかります。過去の投票結果を教えなければ、無知な人々は確率50%で投票するだけなので、ノイズにしかならず、確率qで正しい投票を行う人々が過半数を制します。しかし、過去の投票結果で情報共有すると、無知な人々が情報カスケードを引き起こし、正しい人々が下すのとは逆の選択を行う可能性が出てくるわけです。




次の図は、何も参照しない時の正答率が50%から70%(平均60%)のクイズに対し、正答率が情報共有の結果どう変化するかを示したものです。対応する無知な人々の比率は60%から100%未満(平均80%)ということになります。無知な人々が80%存在する場合、理論モデルの結果は全員が正解する100%の正答率のところと、無知な人々が全員間違って残り20%の正しい人々が頑張った正答率20%のところに分布はピークを持つことを予言します。投票実験では、200のサンプルのうち、対応するサンプル数は78で決して多くないのと、31人の結果なので、投票人数無限大のような鋭いピークとはなっていませんが、それでも正答率20%のところと80%のところにピークを持つことがわかります。

この結果は、情報共有さえしなければ、多数決で正しい答えに到達できたのに、他人の答えをみてしまったために、多数決をとると間違った選択肢を選んでしまうことを意味します。新聞などで支持率という他の人々がどう考えているかを公開することが果たしていいことなのか。他の人々のうち、ちゃんと物事を考えている人々の比率が多いなら問題はないのですが、そうでない場合は悲惨な選択を社会がしてしまう可能性を増やすことになるわけです。空気を読まない人々ばかりならいいのですが。

H氏の結果で個人的に驚いたのは、実はデジタルな投票者(無知な投票者が多数決に従う)の場合に相転移が起きることではなく、疎なネットワークが情報共有のメリットが最大となることなのですが、それは次に。

2011年1月16日日曜日

アメリカの小学校ではこうやって英語を教えている



娘の英語教育の参考に、検索でかかったこの本を注文して読んでみました。娘には、生まれたときから「くまのプーさん」などのディズニー作品やジブリのアニメを英語で見せてはいたのですが、日本語が分かるようになるにつれて、「日本語でないとイヤだ」という風になってきました。では、どう英語を教えるのか?

この本は、文字と音の関係であるフォニックスの前に、フォネミック・アウェアネスという言葉は音のつながりでできていることを教えることが重要であることが説明されています。その教え方を7ステップに分解し、最初にライミング(韻を踏むこと)、次にアリタレーション(頭韻を踏むこ)など、具体的に説明し、またそれに必要な教材、絵本などの情報を解説しています。

正直言えば、ここにあげられている教材を揃えて、それをもとに自分で教材を作成し、娘に教えるのは結構大変そうです。が、音のつながり、その変形、操作を徹底的に反復させることの大事さは理解でき、参考にしたいと思います。この本のタイトルで検索すると、子供の英語教育でいろいろ工夫、努力されている人が多いこともわかり、それらも参考になりそうです。

2011年1月15日土曜日

任期制教員

一昨日、来年度から理学部で採用する任期制教員についての説明会がありました。

任期制は、すべてのスタッフの任期を5年以下にし、緊張感をもたらすことによって、よりよくしましょうというもので、目的自体はいいことだと思います。ただ、「任期の満了後、再任しないことが原則である」と、第7条でいい、「ただし、理学部が必要と認めたときは再任する」にはひっかかります。「原則的に再任という意味であり、他学部の記述に合わせただけ」との説明がありましたが、とてもそうは読めない文言です。もっとも、普通の会社で考えれば、会社が必要としなくなった人材を解雇するのは当然なので、理学部で必要ないと判断されれば解雇は当然なのでしょう。むしろ、「大学の先生はクビにならないから、雇用保険は必要ない」のが変な(昨年から雇用保険は払うように変更されました)わけで。

ある質問で、「年功賃金のまま任期制を採用したら、年寄りしか公募に応募しなくなり、若い人材がこなくなるのでは?」というのもありました。たしかに、任期制のなかったころと比較すれば、条件は悪くなっているのですが、若い人はそもそもポストがないので、任期があろうとなかろうと、公募に応募します。私の知り合いでも、5年契約で助教とかになる人が多いし、それだからといって、そのポストを蹴ったりはしない。あるだけマシだからです。

とにかく、再任は「理学部」が判断するということなので、理学部で必要と認められるような業績を残せということです。怖いのは、「理学部が必要と認める」という条件が、経営状況が悪化したとき、どうとでも解釈できることです。

2011年1月13日木曜日

獅子のごとく


投資銀行の日本人パートナーの話。学生時代ラガーメンとして活躍し、外資系の投資銀行エイブラハム・ブラザーズで経営委員会初の日本人メンバーとなった逢坂丹(おうさかあかし)の物語。ネットで検索すると、ゴールドマン・サックスの持田昌典氏がモデルらしく、いかにライバルを蹴落とし、他社の案件を蹴散らして契約をもぎ取り、出世していくのかを丁寧に書いてあります。

なんか週刊誌の記事を丁寧につなげたような、わかりやすいけれど、著者は500頁のこの本で何を書きたかったのは理解できませんでした。読みやすいのはいいのですが、私にはおもしろくない。おすすめではないです。

2011年1月8日土曜日

銀河アリーナ



相模原市のほぼ中央に位置する淵野辺公園に野球場と銀河アリーナと呼ばれるスポーツ施設があります。銀河アリーナは、夏から秋(5月から10月)は50メートル×8コースのプールに、冬から春はスケートリンクとして利用。スケートでの利用料金は大人800円、こども400円で、貸靴は大人400円、こども200円でヘルメットは自由に利用可。アリーナにはレストランも併設されているので、冬にスケートで遊ぶにはいい環境です。娘の子守りを兼ねて、銀河アリーナでスケートしてきました。昨年末にも三十数年ぶりにスケートしにいったのでこれで2回目。前回よりは、私も、そして人生2回目のスケートの娘もうまくすべれました。

しかし、事件はそろそろ帰ろうと思ったときにおきした。メインリンクのほうで、まあまあスイスイと滑っていたのですが、バランスを崩し、膝をあらぬ方向に曲げながら尻もちをついたのです。尻もち自体は、膝のクッションのため大して痛くないのですが、変なほうに曲がった膝はかなり痛み、起き上がれなくなりました。スケートリンクの係りの方がすぐにきて、結局車いすで衆人の見守る中、医務室まで搬送。応急処置のあと、なんとか歩ける状態だったので、帰宅には問題ありませんでしたが。

人生の6割近く消化したと書きましたが、病気の他にけがも心配しなくてはいけないようです。年は取りたくないものですが、この程度で済んでよかったのでしょう。

2011年1月6日木曜日

サーカス・バルタン



娘が「ピカソのタマゴ」で遊びたいというので行ってきました。ピカソのタマゴというのは、フィールドアスレティックのような、いろいろな障害物をクリアしていくアトラクション。調べたところ、相模湖と富士山の2か所にあるらしく、富士山でも見てこようと富士山のふもとのGrinpa(グリンパ)という遊園地に行くことに。

寒いこと、寒いこと。スキーでもないし、普通の冬の格好でいいと思っていたのですが、富士山の2合目にあるこの遊園地の寒さはかなりのものでした。この遊園地で最も驚いたのが、タイトルの「サーカス・バルタン」というアトラクション。小さな小屋でのアトラクションなので、たいして期待はしなかったのですが、3Dサウンドを駆使したそれは、バルタン星人がいつ現れるのかいつ現れるのかと待ち遠しくなるほど、すばらしいものでした。帰りに、アトラクションの係りの人が「またのお越しをお待ちしています」と言ったのですが、あれはギャグだったのか。まあ、そんな感じですばらしいです。ピカソのタマゴも、一度行けば十分。

2011年1月3日月曜日

あけましておめでとうございます




あけましておめでとうございます。

昨年は、10月末から風邪のため体調不良で、結局完治したのはクリスマスぐらい。今日は一月ぶりに自転車で大学に来たのですが、体調にも変化はなく、大丈夫のようです。人生も平均寿命の6割弱を消化しましたが、健康でありたいものだと思います。

今年の研究は、昨年行った投票実験の結果をベースに理論モデルの解析、さらに別の投票実験と発展させていきたいと思っています。投票実験を行う経緯について、あまり記憶が確かではないのですが、一昨年に大菩薩峠に共同研究者のH氏といった帰りに、科研費があたった(学術振興財団に研究費を応募し、受理されることを「科研費に当たる」といいます)なら投票実験をやろうと言われていたのが始まりです。美人投票を投票者に与える情報を制限しながら実験したら面白いというものでしたが、実験は面倒でイマイチ乗り気にはなりませんでした。しかし、昨年の夏ぐらいに、同じH氏から、デジタル投票モデルで相転移があることが分かったから、投票実験で確かめたいとのこと。さすがに「相転移」と明確な目標があれば実験しないわけにはいきません。そこで、夏休みぐらいから実験の細部をつめて、10月に実験。参加人数62人(31人の列を2サンプル)の小規模なものですが結構大変でした。

結果は結構面白い。まず、「相転移」は起こっているらしい。また、人が他人の投票結果をどう参照するのかについても知見が得られる。競馬の投票モデルでは、人が実際にどう投票するかは分からないので、こういうモデルで投票するという、あくまでモデル、仮定でしかなかったのですが、実験でそうした部分が確認(とまではいかないでしょうが)できたり、雰囲気がつかめたりしたのは大きな収穫です。

もっとも、データだけで論文が書けるかと言われると、31人程度の実験では足りないかもしれない。そこで、H氏のモデルや、競馬で扱ってきたモデルとは別のモデルを解析し、その結果ベースでまとめるのがいいのかもしれません。

こういう感じで今年の研究は始まりそうです。また、卒論発表が迫ってきているので、競馬予想のほうも昨年夏のJWEINでの発表のレベルをあげたものにしたいと思っています。AR70%(目標は72%。オッズ+5%)を出せるかどうか。そして、それを組み合わせて馬単、3連単でオッズのゆがみを利用した必勝法があるのかどうか。また、投票実験をもっと効率よく大規模(3桁)に行うためのシステムの開発も必要になりそうです。投票者はPCから投票を次々と行い、その結果をサーバーに蓄積する。その際、部分的に過去の情報を投票者に表示する。それを複数の投票者が同時に実行できるようにする。Rubyあたりでの開発が簡単でしょうか。



今年もよろしくお願いします。(大菩薩嶺から見た富士山)