2011年7月3日日曜日

複雑ネットワーク入門


ネットワーク科学の教科書は、増田氏と今野先生の「複雑ネットワークの科学」がしばらくユニークソリューションであったのですが、この教科書は同じく今野先生が井出氏と書かれたもの。内容的には、5章までは、書き方が物理っぽかった増田氏とのものとは違い数学チックである他は扱う題材はほぼ同じ。ネットワークの定義から、スモールワールドネットワークのWSモデルやスケールフリーネットワークのBAモデルの紹介。ランダムネットワークのクラスター係数を厳密に計算するなどの数学的な書き方、ネットワーク科学の現象論的な側面の解説がほとんどないことを考えると、増田氏とのテキストのほうが「入門」としてはいいと言えます。

けれど、6章のしきい値モデルの解説は楽しめました。頂点に乱数をふって、2つの頂点間にリンクをはるかどうかは、その和がしきい値をこえるかどうかで決まる、というだけの単純なモデルなのですが、乱数のふりかたが指数分布なら頂点から生えているリンクの数の分布がべきになることや、ネットワークが階層構造をもつこと、また、クラスター係数、平均頂点間距離の計算など、論理展開を追うのが楽しめる本です。この章はページ数を見ても力が入っているのが分かります。

このテキストを卒論のゼミで使っているのですが、適度に演習問題もあり、学生をいじめるのには使いやすい本でした。

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