2011年2月10日木曜日

つながり



誰がホモ・エコノミクスを殺したのか?そもそもホモ・エコノミクスは存在したのか?著者の答えは、非工業化社会の原住民に非常に合理的に行動する人々がいるというもの。アマゾン川流域のマチゲンガ族、タンザニアのハザ族、エクアドルのケチュア族など。それらに共通するのが社会性の欠如。部外者と遭遇しない、市場での取引を行わない部族ほど経済学者が考える「人間は私利私欲に基づく種であり、最小限のコストで最大限の個人的利益を得ようとする」ホモ・エコノミクスに近い行動をする。

一方、人類はこのホモ・エコノミクスの状態から進化し、ホモ・ディクティアヌスになったと著者達は考える。ラテン語のdicty=「網・ネット」とhomo=「人間」からの造語で、「人間の動機を純粋な利己主義から切り離」し、「私たちは他人とつながっているゆえに、また他人を思いやるように進化してきたがゆえに、行動を選択するにあたって他人の幸せを考慮」し、その結果自分の欲求に「周囲の人々の欲求を」を含め、「自分とつながりのある他人の欲するものを欲する」。

また、人の脳の大きさから、人は150人程度の人と「つながる」ことができる。この150をダンバー数という。ここでいう「つながる」というのは、「相手のことをよく知っている」関係のこと。150人とつながりを維持するためには、「毛づくろい」では自分の時間の42%必要となるので、人は「言葉」を発明した。「言葉」なら、「毛づくろい」と違って、1対1である必要はなく、一対多でOKだし、効率がいい。ダンバーの試算では「毛づくろい」より言葉は2.8倍効率的で、レストランの予約の人数を調べてみても、グループの人数の平均値は3.8だった。

人はなぜ投票するのか。自分の一票で選挙の結果が変わるわけでもないのに。筆者たちは「3次のルール」という自分の行動が友人の友人の友人にまで影響することを発見。すると、ひとり10人の友人がいれば、投票行動は、10人の10人の10人先の計1000人に影響し、ひとり1000票の価値を持つことになる。すると、選挙結果に影響がないとは言えず、投票行動は「合理的」となる。その他、「肥満は伝染するのか?別にいっしょにマックにいくわけでもないのに」などなど、取り上げるテーマも興味を引くものばかり。

おすすめです。

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