田崎先生の「統計力学」の教科書の第1巻。昨年まで統計力学を講義していたのですが、自分で書いて配布していたテキストの内容が恥ずかしくなるぐらいの完成度の高さ、説明の的確さ、そして挿話的に語られる統計力学の発展史の面白さに圧倒され、彼の草稿(
彼のWEBページから落とせる)を講義で配るようにしました(それ以前の講義も彼の「数理科学」の記事や佐々先生の「熱力学」に影響されて準備したので、根本的に変というわけではないハズです)。もちろん、この教科書のレベルの講義をやって、学生がついてこれるのか、というと無理だと思う部分もあります。実際、前書きにも教科書と講義は違うもの、とあるし。しかし、講義する側や本当に統計力学を理解したい学生は、この教科書で勉強するのがベストだと思います。というか、この本ぐらいしか説得力のある本はない。
この本で私が感心するのは、所々で語られる彼の「統計力学」に対する思いです。第6章の「結晶振動と結晶の比熱」では、「統計力学の真の目標は、普遍的な『物理』を最小限の物理的な性質だけに基づいて理解することである」。こう書くのは簡単です。しかし、この意味で『物理』を研究していくのは非常に難しい。ともすると、現象のデータに振り回されたり、数学にのめりこんだりして『物理』を見失ってしまう。こうした大事な点を、少々毒を含ませた(と感じるのは私だけ?)筆致で本文や脚注で書かれると、「正しい物理学者でありたい」と思ってします。そう思わせてくれる「熱い本」です。
とにかくお薦めの教科書です。
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