2010年5月19日水曜日

統計と確率の基礎


著者は東北大学の服部哲弥先生。数理統計学に関するテキストです。なぜ、この本を読もうと思ったのかは忘れてしまったのですが、アマゾンのランキングや2chでのスレッドの順位の時間変化に関する仕事を検索で見つけて、その流れで買ってみたような記憶があります。基研での確率モデルの研究会で彼の「くりこみ」に関する講演をきいたのですが「結構すごい」と思った記憶も後押ししました。

内容ですが、結構つらいです。難しい。2009年度の大学院の講義でテキストに指定し、そのあと卒論のゼミで続きを扱ったのですが、章末にまわされている証明や計算を負うのは結構大変です。卒論の学生さんたちもグッタリした様子だったので、結局その年には最後まで到達できず。ただ、内容は学生さんには受けがいいみたいで、窓口での並列並び、直列並びの待ち時間の分散、宮城沖地震の予測などのトピックには興味を持ったみたいです。と、前半は興味深いトピックを散りばめながら、基礎的なことを明晰かつ問題意識を明確に展開してある。(ちなみに、院生の一人が神奈川県の地震予測をやったら、恐ろしい結果になりました。)

この本の面白いところは後半です。ベイズ統計、検定、尤度、いろいろ言葉は知っていても、これまでちゃんと統計学を学んだことがなかったので、理解したというレベルではなかったのですが、この本の後半を読むと、いろいろ疑問に思うことに、その疑問を明確にしながら答えてくれる。例えば、検定での棄却域は、第2種の誤りを最小にするように選ぶということをベイズの立場で解釈し、さらに、ワルドの期待効用の理論での解釈も紹介(このあたりは、はしょりすぎでよく分かりませんでしたが)。そして、「・・・合理的意思決定を支援する学問としての統計学という観点から、確率論にもとづく統計学の数学的結論をどのように提供すれば正しく利用してもらえるか、使いやすいか、その問い直しが20世紀後半の数理統計学の歴史の一面にある気がする。・・・その他あらゆる統計学理論に、わかりやすさと誤解の危険がそれぞれあるともいえる。」

統計学は難しい。その難しさを分かりやすく解説してくれるいい本だと思います。が、最初にこの本を読むのは辛いでしょう。やさしい本で学んで、さらに勉強したい場合にはいいと思います。

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