2010年1月10日日曜日

Efficiency of Racetrack Betting Market



競馬研究のバイブルのような本というか論文集。初版は1994年で、第2版(2008年)の序文には、初版が絶版したころ、競馬ファンドのようなシンジケートがこの本のアイデアをその研究のベースとし、数億円もうけたとか、総額で1兆円になったとか、本当か嘘かわからないことが書いてあります。そのため、カルトアイテムとなり、品薄、内容、そして夢がオークションでの値段を数千ドルまでに引き上げたのだとか。ちなみに、現在の第2版はアマゾンで買うと1万円ぐらいですが、第2版が出るまではアマゾンの古書が3,4万はしていたので、こちらは全くの嘘ではないのかも。

内容ですが、索引まで含めると648ページなので、すべてに目を通すのは無理です。が、全部で7セクションあるうちの各セクションの最初にまとめがあり、それを読むと過去の競馬研究の流れが分かって参考になります。もちろん、編集者のW.T.Ziembaの研究が中心なのでしょうが。

経済学、心理学、ファイナンス、統計学、数学、OR、といろいろな分野の研究の紹介があるのですが、基本は「競馬市場が効率的なのかどうか」を明らかにし、そうでないならばその非効率性を使って「儲けられるか」という内容です。もっとも古い論文はR.M.Griffithの1949年のもので、オッズは競馬ファンが考える馬の主観的な勝率を表し、実際の勝率(同じオッズの馬のうちの勝ち馬の比率)とを比較し、人気馬(Favorite)のオッズは実際の勝率から想定されるものより高く過小評価されているのに対し、不人気馬のオッズ(Longshot)は勝率からの想定以上で買われすぎ、というFavorite-Longshotバイアスを報告しています。以降の研究は、このバイアスの検証やその原因の解明が中心になりました。

原因は競馬ファンはリスク選好だから(それ以外にも、確率の正確な大きさを認識できないのだ、とか、評価がバラツクと説明できるとか、説はいろいろ)らしいです。でも、その競馬ファンが生命保険にも入っている(リスク回避)のはなぜ、と経済学者は疑問に思うそうです。そのため、効用関数に凸凹のものを用いるといいとか、効用関数をデータから導きましょう、とか。

興味深いのは、
(1)ファンダメンタルの手法で馬の勝率を評価する試み。
(2)走破タイムの分布をいろいろ仮定して、1,2,3着の確率を求める試み
(3)馬単。3連単は単勝よりも情報の精度が高い

などなど。あと、物理で競馬を扱った論文はありませんでした。

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